雌伏(しふく)の時を経て:(6)お金編
雌伏(しふく)の時を経て:(6)お金編
アイキャッチ画像は、”ブラックスワン”。本を読んだことがある人は多いだろう。不確実性と変動性の高まる現在において、備えあれば憂いなし。
昨今では、年金2,000万円問題を契機に、ネット証券の口座開設数や、投資信託およびUS株の取引高が急増した。
ようやく社会的にも、NISAやiDeCoが、既存の富裕層ではなく、本来制度利用を届けたい層に届き始めた気がする。
未来は予測するものではなく、構想するものである。
構想した未来を実現する際には、「お金は後からいくらでもついてくる」と成功者は言うが、みな他人事だから注意しよう。
健康と同じく、完全なる自己責任のもとで、しっかり資産を育てていかなければいけない。
本記事では、参考書籍の紹介と、わたし流の考え方を紹介する。
人生100年時代の考え方
本題に入るまえに、リンダ・グラットン「LIFE SHIFT」について紹介したい。わたしも大きな影響を受けた。
簡単に要約すると、
- わたしたちは望むと望まざるとに関わらず、人生のステージ移行を何度も経験する「マルチステージ」の人生を生きなければならない。
- その際には、お金という有形資産だけでなく、スキルや知識、家族や友人、健康といった見えない資産(無形資産)の運用、バランスを大切にしなければならない。
という提言だ。本書では、無形資産は「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つに分けて紹介されている。
自分の人生設計について、漠然と”一本道”の人生観をもっている人は多いと思う。様々な選択や偶然によって作られた自分の人生を振り返ると、確かに紆余曲折ありながらも、一本道に見えるだろう。
そして、自分の将来について思いを巡らせるとき、目の前にはたくさんの道が用意されているような錯覚を覚える。網の目状に展開された道を、まるで”あみだくじ”のように選択に応じて進んでいく。人によっては、階段状にレベルアップしていくイメージを持つ人もいるかもしれない。将来のビジョンから逆算して、キャリアや家族の選択をしてゆく人も多いだろう。
しかし、いつの間にか、この立派な計画性は、リスクを過大に評価し、自分の将来の選択をどんどん狭めていっていることに気づく人が増えてきた。
本書を読み、将来の選択肢についての視座を上げ・視界を広げ、いま一度、勇気を振り絞る人が増えてくると思う。
興味をもった人はぜひ読んでみて欲しい。きっと世界観が変わる。
- 作者: リンダグラットン,アンドリュースコット,池村千秋
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (20件) を見る
さて、本書で紹介された無形資産の話は、このブログでも雌伏シリーズ(2)~(5)に書いてきた。
今回(6)お金編では、有形資産に絞った話を書いてみたい。
何でもかんでも偶然性に任せて、計画なく挑戦していくのは、単なる無謀だ。
特に、お金に関しては、計画性ないままに選択を繰り返せば、減ることはあっても増えることはない。
各種助成金や奨学金、CtoCのスキルシェアやクラウドソーシングなど、選択肢がどんどん多様化してきている一方で、使いこなせている人はごく一握りしかいない。
基本的なビジネススキルやマネーリテラシーのない人が、根性だけでPDCAサイクル(あるいは、DCPAサイクル)を回し続けるのも茨の道だ。
仮に、五大都市圏在住、20代~40代サラリーマン、を想定したときに(当然、私もそのうち1人に過ぎない)は、オーソドックス、かつ、丁寧に、資産形成についての勉強を勧めたい。
資産管理会社の活用や個人事業主は、本スコープの対象外だ。
自分なりのフレームワークで考える
お金の管理を感覚的にやっている人も多いと思う。
意識的に管理してゆきたいならば、「キャッシュフロー」を意識してゆくのが良い。
キャッシュフローは、大きく4つある。
営業CF
投資CF
FCF
財務CF
それぞれについて、人生のフェーズに併せて、プラス/マイナスを管理してゆくのが得策だ。
詳しくは東京商工リサーチのこちらの解説を参考にしてほしい。
キャッシュ・フロー計算書 : 東京商工リサーチ
記事を読めばわかるように、
- 資産拡大を目指す時期には、成長企業型の、営業CF(+)、投資CF(-)、財務CF(+)、を作るべきである。
- 簡単に言えば、稼いだお金をひたすら再投資するということだ。
- 一番のドライバーは、投資CFの最大化になる。お金に働いてもらうためには、現金を適切なリスクに晒して利潤を生んでもらわなければならないからだ。
- 各CFを解説すると以下。
なお、不動産(住宅用、投資用問わず)という手段を取らないのであれば、基本的には、通常の給与収入や副業収入から、株や債券への投資を捻出し続ける必要がある。投資から生み出された利息や売買益も、再投資してゆこう。
また、個人のBS(貸借対照表)の資産の部、現預金+投資有価証券を最大化する、と考えるのだけでも十分ではある。ただ、その場合には、負債の管理を忘れないように注意しよう。わたしの場合は、キャッシュフローで考えた方が漏れなく理解しやすいというだけだ。
面白いのは、リンダ・グラットン「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」でも、同じように人生のフェーズごとに、有形・無形資産の成長時期をいくつかのパターンで組み合わせてゆくシナリオが提示されている。上記の話は、有形資産に限定し、なおかつ、それをキャッシュフローの概念でフレームワーク化しているが、基本的な思想は似ている。
この考え方は、自分の資産形成を考えてゆくうえで、大事な思考の補助線になるだろう。
まとめると下図のようになる。ポンチ絵を描いてみたよ!
これだけ読んどけって教科書2選
本多静六の貯蓄と資産形成のススメ
貯蓄と資産形成の話は、本多静六の本を読んでおけば十分だ。
世の本は、だいたいこの人の考え方の焼き直しに過ぎない。仕事に励み、徹底した質素倹約な生活をして、そこから生み出す余剰資金を投資にあてるというオーソドックスな話だが、その実行っぷりが徹底している。読んだことない人は、立ち読みでもいいので目を通すべきだろう。
- 作者: 本多静六
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2013/05/15
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
山崎元が鮮やかに提示した、唯一の正解
資産運用に関しては、あなたが初心者なら、山崎元の本を読んでおこう。わたしも田舎の親父や兄弟に、ひとまずこの本を送り付けている。
アクティブな株式運用やFXで、安定的に収益を生み出すのは、一定の勉強期間、試行錯誤、運、度量、適切なリスク管理、適切なマインド管理、など求められるものが多い。この本の内容を理解できないようでは、アクティブな運用は諦めた方がいい。
世の多くの人にとっては、非アクティブに、適切なポートフォリオ管理(投資信託、外貨、現金)を行うのが最善手となる。
とはいえ、世のなかの投資信託の99%は、投資家に不利な商品設計になっている。
本書で提示されているように、グローバルINDEXに連動した信託報酬%の低いファンドに投資するのが唯一解である。そう、正解があるのである。
2019年9月現在、SBI証券であれば、「ニッセイ外国株式インデックスファンド」が代表的だ。この場合、ノーロード、つまり、買付手数料も無料だ。楽天証券でもマネックス証券でも、ネット証券ならどこでも良い。口座を持っている証券会社でフィルタをかけて探してみて欲しい。必ず1つは見つかるはずだ。
更に、こういったファンドに対して、iDeCoまたは企業型DCを通じて、毎月、安定的に購入してゆくことで、節税メリットも享受できる。初期~中期にかけては、運用益よりも節税のほうが実はインパクトがデカいので、これを利用しない手はない。
ロボット投資やAI投資、つり銭投資、ポイント投資、なども不要である。仮にどうしてもやりたいなら、あくまで自前でポートフォリオを組むのを優先して、それらが出来上がったうえで、オプション的にやるくらいのものだ。
- 作者: 山崎元
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/09/13
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (4件) を見る
さらに勉強したい人向けの2選
どうしても個別株を触りたいなら、ウォレン・バフェットの師匠、ベンジャミン・グレアムの本を読んだうえで、いろいろ自分に合ったスタイルを見つけるといい。ランダムウォーカーでも、オニールでも、ピーターリンチでも読み漁るといい。
賢明なる投資家 ? 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法
- 作者: ベンジャミングレアム,土光篤洋,Benjamin Graham
- 出版社/メーカー: パンローリング
- 発売日: 2000/09
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
どうしてもFXを触りたいなら、アレキサンダー・エルダーの投資苑(新著:ザ・トレーディング)を読むといい。
ザ・トレーディング──心理分析・トレード戦略・リスク管理・記録管理
- 作者: アレキサンダーエルダー,福井強
- 出版社/メーカー: FPO
- 発売日: 2019/03/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
古典的名著にあたったうえで、自分なりのエッジのあるルールを作り、検証をして、小ロットから始めることを忘れないでほしい。
補足説明
ここからは、個別CFの最大化について、簡単に補足したい。
利益の最大化
利益を把握するためには、収入と支出の家計管理が必要になる。
- 収入は、「年間の成長率」と「安定性」で評価する。
- 節税は、額面と手取りの「粗利率」で評価する。※諸説あるが、税金を原価と考えると感覚的に分かり易い
- ネットされた粗利から生活コスト(固定的な支出)を除いたものが利益になる。適切な支出状況にあるかどうか、「毎月の利益率」で評価する。
収入UPの基本的な考え方
より現代にあった実践的な補足を加えるとすると、「収入」と「節税」の部分だろう。
収入に関して、
年収1,000万円に届いていない人は、まずは、目の前の仕事やキャリアを突き詰めて、大台を目指そう。だいたいその辺までは、税率と手取りのバランスで、昇給賞与がダイレクトに満足度に効くだろう。
年収2,000万円に届いていない人は、累進課税に苦しむ時期を過ごしていることだろう。できる限り、生活水準を上げないようにして、マイホームの優遇税制や、iDeCo、ふるさと納税を駆使して、節税に励み、手残りを最大化するしかない。
あるいは、~3,000万円、~4,000万円くらいを目指せるのであれば、そちらに胆力を振り向けても良いだろう。
節税の心得
サラリーマンで、年収2,000万円未満でも、不動産や株式、FXなどの投資を行っていない場合でも、自分の手で、毎年、確定申告をするべきである。強く勧めたい。会社がやってくれる年末調整だけで満足している人も多いと思うが、やってみれば簡単なので、ぜひ覚えてほしい。会社の若い子にも、自分でやってみるよう指南している。
資産運用で+1%出すよりも、税金で▲1%出すほうが簡単である。
とはいえ、本記事でもたびたび登場したが、サラリーマンができる節税手段は限られている。年収500万円でも、年収2,000万円でも、基本的にできることは同じだ。
- 借上げ社宅 ※外資系に限る
- iDeCo、または、企業型DC の満額活用
- ふるさと納税
- その他、所得控除(医療費、扶養、生命保険、地震保険ほか)
- 住宅関連の減税(新築、中古、リフォーム)
- 株式やFXの損益通算と繰越控除
合法的な範囲での節税手段を自分なりに理解して、駆使していくしかない。これは誰も教えてくれるものではないので、自分で勉強するしかないので、一回本腰入れて勉強してしまおう。
まとめ
20代~40代のビジネスマンを想定した考え方を書いてみた。
当然、わたしの特殊ケースから、汎用的なアドバイスを導き出すのは難しいと自覚している。
ただ、ex-コンサルからの事業会社でのキャリア形成は、綺麗なサクセスストーリーに見える他人も多い。
個人の懐事情が気になる読者もいるだろうから、これまで勉強や試行錯誤をしてきた内容を踏まえて、まとめてみた限りだ。
わたしの私生活は、質素倹約ではないが、派手でもない。家族の扶養も重いので、自然と、あらゆる生活コストが重いからだ。ふつうのサラリーマンとの違いでいえば、自宅が都心にあることと、食費で多少の贅沢ができる・切り詰める必要がない、家族旅行に定期的に行ける、というくらいだ。それだけでも十分である。
仕事や家族優先のライフスタイルのため、資産形成にかけられる時間も限られてきた。限られた時間で、取れるリスクも限定されてしまう。兼業投資家の強みを活かして、アクティブ型の運用にかける時間を増やすようにしているが、まだ満足いくものではない。
それでも、お金に対する正しい価値観と、正しい投資戦略を持って、自分の取れるリスク量に見合ったリターンを得ることはできている。
投下時間 × 時間当たりの効率 = アウトプット
仕事と同じである。目標とするリターンに対して、どれだけの時間を投下するか、どれだけの効率を叩き出せるのか、正しく見極めたい。
寝ている間に働いてくれるので、株や不動産を勧める人も多い。そこは、自己判断でしかないが、「リスクリターン」と「再現性」を見極めることを忘れないでほしい。単なるまぐれ当たりでつかんだアブク銭は、消えるのも早い。運よく転がして増やせた人もいるが、そういうサイコロを振る勝負をしたいのかどうか、よくよく意識したい。特にこのアベノミクス景気の間に、だれだれが仮想通貨で儲かった、不動産投資で儲かった、と他人の景気の良い話に惑わされた人も多いだろう。それで成功した人も、失敗した人も両方あることを知っているだけに、わたしは安易に人に進めることはできない。
そこで王道パターンとして、本記事では以下のポイントを紹介してみた。参考になれば幸いだ。
- 人生100年時代の有形資産、無形資産の組み合わせシナリオ
- 自分なりのフレームワークで考える(投資CF(-)、営業CF(+)、財務CF(+))
- 本多静六の貯蓄と資産形成のススメ
- 山崎元が鮮やかに提示した、唯一の正解
- 収入UPの基本的な考え方
- 節税の心得
雌伏シリーズ;
仕事の変化(Business, Work, Vocation)
- たくさんのハードシングスがあった。
- 沈黙の裏で起こっていた、激動の5年間を振り返る。
家族の変化(Family)
- 人生で果たすべきミッションが、アップデートされた。
- 新しい家族の話もある。
健康の変化(Physical, Health)
- 食事、運動、睡眠、人間ドック、そして、心のメンテナンスについて
スピリチュアルの変化(Spiritual)
- 昨年には、半年かけてエグゼクティブコーチングを受けて、自分の内面を掘り下げる作業もした。
- キャンプ・アウトドアにも目覚めて、自然に浸る喜びを感じるようにもなった。
- 前述のとおり、神仏の世界や、人生哲学についての勉強をしていた時期もあるし、一定の視点を育てられたように思う。
知性の変化(Mental)
- 最近、家の積読を整理していて、何の気なく手に取り読む本すべてがドンピシャに当たっているので、少しだけ紹介しようと思う。
お金の変化(Finance)
- お金と資産形成のお話です。勉強する前の若き日の自分に向けて、ポイントを羅列してみました。
人間関係(Social)
(人間関係編に書きたいこと)
- んー、一番薄いかもしれない。この領域は自分として最も関心が薄いんですよね。