ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

人事評価面談で話すべきこと

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さて、前回の記事の続きだ。

具体的な処方箋を書いてみたい。あくまで僕の技なので、他にも効果的なやり方はたくさんあると思う。

 

 

社員や部下の人事評価面談の時に、必ず質問していることがある。

 

⑴どういうモチベーションで働いているか?

⑵人生における仕事の位置づけは?

⑶現時点で、どういう報酬の成長カーブをイメージしているか?

 

意外と理解していた「つもり」で、想定外の反応があったりするから、おもしろい。

ぼくが体験した事例を交えながら解説してみよう。

 

⑴モチベーションの方向性

よくある回答は、成長したい、成果を出したい、インパクトあることをしたい、チャレンジしたい、貢献したい、この仲間とxxしたい、などだ。

ここからもう少しだけ掘り下げてみる。ただし、掘り下げ過ぎると現状に余計な疑問が生まれてしまうので、注意が必要だ。仕事の関係上は、1段か2段だけでいい。

「なんでxxしたいの?」って軽く掘り下げるだけで十分だ。それでだいたいわかる。

 

こんな例もあった。

とある若手エースが、入社当初から「たくさん成長したい」と言っているので、ぼくも期待と負荷を掛けていたのだが、人事面談で改めて話を聞くと、実は「楽しく仕事したい」という欲求だったり、「評価されたい」という承認欲求で実は動いていて、驚いたことがある。

本人も明確には気づいていないから、厄介だ。自分は他人よりも成長欲求が高い方だと思っている。あるいは、そういうプレイに徹したほうが得だとすら思っている節がある。

もし、本当に成長したい!と思っているのなら、ストレッチしたマネジメントや、修羅場やチャンスを提供してゆく。ぼくはそのつもりマンマンだった。覚悟のレベル感だけ確認して、負荷を見誤らないようにしようと。

この面談で、実は、楽しさや充実感、承認欲求、に根っこがあったから、ストレスフルな環境はデモチ要因になってしまうことに気づくことができた。真逆の対応をしてしまいかねない、危ないところだったのだ。

本人もイマイチ期待やプレッシャーを楽しめていないことにモヤモヤしていたから、ちょっとだけ視野を広げて自己認識を改めてもらうことにした。

ぼくはぼくで、彼/彼女の成長支援のために、1on1ではビジネススキルの分解や課題設定のやり方なんかを手ほどきしていたのだけど、刺さりが弱くて「?」と思っていたとこだった。違和感の理由がこれで明らかになった。

割と最近の若手層に多いタイプだから気をつけたい。何度も騙されかけた。

 

 

⑵あなたにとって仕事とは?

いろんな問いかけ方がある。

「ライフワークなのか?」「ライスワークなのか?」と掘り下げるもヨシ、

「プライベートと仕事のバランスをどうとりたいか?」を確認してみるのもヨシ。

「仕事を通じて、充実感を得たいのか?」「いや、いい仲間に囲まれていれば幸せで、そこまで求めていないよ」とか、いろんな視点があるものだ。

 

このテーマを聞いてみると、意外な話の展開になる場合が多い。例えば、趣味や家庭の話、読んでいる本や関心のある勉強領域の話、最近心が動いたことの話などをしてくれたり。

その人のいまの関心事や、マインドシェアがわかって、理解が進む。

 

 

⑶報酬への期待

⑴⑵の理解をベースに、流れで話してもらうと本音を引き出せるだろう。聞くだけならタダだ。無責任に期待を持たせたり、約束しちゃダメだけど。

また、あくまでその時の経済状況に基づく回答になるし、家庭環境や年齢に応じて、同じ人でも徐々に回答が変化するので、気をつけたい。

切実な問いなので、しっかり確認すべきポイントだ。ここでの答え方に、人となりもにじみ出るので、注意深く観察しよう。

よくあるのは、「いつかは1,000万円という漠然としたイメージ」「いまはまだ経験を優先したい。給料の優先度は高くない」「年相応で、仕事がきちんと評価されて報酬に反映されてゆけばいい」といったものだ。

ここは話は広がらないので、掘り下げなくていい。「わかった」と理解を示すだけで十分である。

 

 

⑴〜⑶を聞くことで仕事のパフォーマンスや報酬還元の期待値が刷り合っていく。

半年ごとの査定タイミングで変化がないかチェックするだけでも、正しく状況理解できるし、お互いリマインド効果もある。

 

普段の1on1では、パフォーマンス評価の期待値はすり合うが、報酬や熱意の期待はすり合わない。

こういうことは、まっすぐ直球で聞くことが大事だ。こっちがストレートに聞くから、相手もストレートに答えてくれる。

 

 

変化球の質問もある。

 

⑴前職までの報酬遍歴は?
入社面接でも聞かないので、意外な山谷があったりする。そのときどう思って転職したのか、給料面からも理解できる。

人の価値観を知るには、過去の行動原理を聞くのが鉄則だ。「給料はよかったけどハードワークすぎた」とか、「給料低かったけど楽しかった」とか、いろんな価値観が見えてくる。

正しく理解しようなんておこがましい。少しでも参考になる情報から、その人の人となりを推察するにすぎない。

 

⑵奥さんからの報酬↔︎仕事↔︎家庭のバランス期待は?
「もっと家事育児手伝え」なのか、「もっと稼げ」なのか、「体が大事よ」なのか。奥さんから何て言われているか、聞くといい。

家庭が大事な人にとっては、家族からの期待(プレッシャー?)は、本人の意思よりも優先されたりする。知っておくとよいだろう。

奥さんの方が稼いでいる話や、逆に奥さんが夜勤などで頑張っている話を聞いたり、サラッと大事な情報が隠れていたこともあった。

 

 

他にもたくさんの切り口で話を聞いている。人事評価面談だからこそ、話せることもある。折角なので、その人のことを知るために、興味を持って色々聞くと良いだろう。