ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

トヨタ社長のほとばしる熱い想いに感化された話

Thread Bare

 

woven city。

TOYOTAが打ち出したコネクティッドシティ構想。

東富士工場跡地に、実証実験の街をつくるという。

その街のコンセプトが「woven city」。編み込む街。

3本の道を網目のように編み込む街をつくるという。

「機織り」から始まったTOYOTAらしい名前だと思う。

 

 

みなさん、ぜひこの記事を読んで欲しい。

 

jidounten-lab.com

 

豊田章男社長が、年頭挨拶で今後のビジョンや経営にかける想いを忌憚なく語っている。書き起こし文を読むに、今回から、業務命令での参加ではなく、自主参加した社員がこの話を聞いているという。一部、空気を読んで消極的に参加している人もいるとは思うが、この話をトップから直接聞いて、心に火が灯ったひとも多いのではないかと推測する。

 

ぼくが読んでいて驚いたのは、「自分と社員との間に、距離を感じている」ということをトップ自らがさらけ出して、なおかつ、社員にむけて「おれも頑張るから、お前たちももっとこうしてくれ」と態度を改めるよう要望している点だ。

 

すごい勇気だと思う。

創業一族だからこそ言えることなんじゃないかとも思う。

それでもやっぱり、大企業のトップがここまで開けっ広げに社員を挑発するのは、すごい勇気だと思う。

 

 

要約すると、

  • おれは、トヨタを、モビリティ・カンパニーに生まれ変わらせたいんだ。
  • そのために、コネクティッド・シティ構想を掲げて、まず第一歩目のwoven cityを成功させたいんだ。
  • そのために、トップダウンで、現場に降りて率先して背中を見せるから、みんなも、ただ突き上げ型・押しつけ型のボトムアップではなく、トップの考えを汲み取り寄り添うボトムアップをしてこいよ。
  • そこに賛同しない、理解しようとしない態度は、やめてくれ。

と。

 これらを魅力的なビジョンと、熱いパッションでくるんで、がーーーーっと伝えた。

あっぱれ、だ。

トップの立場の人たちは、社員との心の距離、言葉の壁、理解されないもどかしさを感じる場面は、一度や二度ではないだろう。どうしても、本気度も違うし、覚悟や熱量にも差が出てきてしまうから。

 

ぼくも豊田社長のように、志高く、みんなも変わってくれ!と言いたい場面が何度もあった。ただ、そこまで踏み込んで言うだけの実績も自信もなかったから、踏み込めなかったし、単なる経営者の理屈を社員に押し付けるようで、理性のブレーキがかかってしまっていた。「そんなことを言われても、自分が逆の立場だったら刺さらないし、嫌だよなぁ」と。

ところが不思議と、豊田社長の話を読むと、すっとぼくの胸に入ってくる。当事者ではなく、蚊帳の外から眺めているからかもしれないが。

型に落とし込むと、

 

ビジョンを語り、

熱い想いを吐露し、

社員に変化を求め、

最後に、約束をする。

これらを、トップが、全人格的に、人間性をさらけ出して、自分の言葉で語る。

何なら、打算抜きに、話したいから話している。言いたいから言っている。ようにすら見える。素晴らしいと思う。

 

 

孫さんともまた違う。孫さんは、自分の実績と構想、お金の臭いをもっとムンムンに押し出す。これはこれで、可能性を感じさせる魅力的なプレゼンテーションだと思う。

豊田社長は、自分でもいうように「格好悪くてもいい、ありのままをさらけ出す」「ただ自分はトヨタが大好きだ、ならその大好きなトヨタを守りたい」というスタンスだ。スタンフォードの卒業講演なんかよりも、ずっと日本人の心に刺さるメッセージングだったし、これを同じクオリティでできる人が他にいるのかと思う。

 

ぼくは豊田スタイルのほうが好きだ。不器用な感じに共感すら覚える。

 

 

 思い返せば、米国でのリコール問題の際、米国議会の公聴会で豊田社長が見せたパフォーマンスは素晴らしかった。これを契機に、国内外からの豊田社長への評価が上がった。当然、取引先や家族、関係のない社外からも、豊田社長に対する見方が大きくプラスに変化した。社員たちのなかにも、リコール問題への対処は大変だけど、そんなトップの評価を嬉しく、誇らしく思った人もきっと多かっただろう。

この事件以降、豊田社長も、どこか誇らしく、自信溢れる演説が増えてきた気がする。決算説明やカンファレンスの発表を全部見たわけではないが、力強いメッセージを発信する姿をメディアで見かけることも多くなった。

 

 

SONYの電気自動車に続き、TOYOTAのコネクティッド・シティ。

夢溢れる構想で、世界をあっと言わせる事例が増えてきた。

日本のスタートアップは、大企業を嘲笑する暇があったら、彼らのように世界をあっと言わせよう。

ジャック・ドーシーやイーロン・マスクスティーブ・ジョブスに憧れるのも良いが、ぐっと憧れる想いを胸にしまい、世界をあっと言わせる会社に嫉妬心や悔しさを覚え、歯をくいしばって頑張る。

そういう生き様でありたい、と強く思います。