雌伏(しふく)の時を経て:(4)スピリチュアル編
雌伏(しふく)の時を経て:(4)スピリチュアル編
己の内面と向き合う時間はたっぷりあった。
ただ、それを掘り下げて、言語化する作業を怠っていたように常々感じていた。
圧倒的に足りなかった内省量。
エグゼクティブコーチングをきっかけに強制的に再起動するところからようやく自分らしいやり方が復活できたように思う。
エグゼクティブコーチングの体験
2年前に、会社のプログラムで、半年かけてエグゼクティブコーチングを受けて、自分の内面を再び掘り下げる作業をした。当時は新しい会社でのミッション・ビジョンを作り直している最中だったので、己と向き合うには絶好のタイミングだったと思う。頭のなかでいろいろな想いや考えが交錯しすぎていたものを、一度全部吐き出して、ファシリテートを受けながら感じたこと、考えたことを整理していった。
主なテーマはこんなところだ。
- 人生や仕事において大事にしていることは何か?
- 今後の自身のリーダーシップのあり方とは?ロールモデルは?
- トラブル対応から見えた、自分の経営哲学・価値判断軸は?
- 個人の人生のビジョンは何か?ビジュアライゼーション、Photoセッション等を通じて見えてきたことは?
問題意識の根っこには、グループ会社社長という立場と、本社執行役員という立場の二重人格を使い分けているうちに、自分のスタンスがぶれ始めていることにあった。
2つの立場でコンフリクトが起きることも増え、どちらか一方でスタンスを張るだけでは不十分で、自分流を貫かなければいけない必要性にも駆られていた。
全く新しい環境で、社員から求められる社長像も、自分のイメージとかけ離れていた。社員1人1人の動き方や組織ビジョンについても、ブレが起きていた。
そんな状況下で外部から来た人間が求心力を発揮しながら、事業を多角的に展開・成長させていかなければならないプレッシャーに、いつしか本来の自分を見失いかけていたように思う。
久々に本格的なコーチングを受けたこともあり、毎回、話足りない、考え足りない、と煮え切らない会が続いたのを覚えている。コーチング担当がシニアな2名だったこともあり、胸を借りるつもりで洗いざらい話をできたのは良かった。ただ、洞察力や質問の切り込みが弱いので、私も2人を頼るというよりは、自分の考えを推し進めるために利用してやろう、くらいの気概で取り組んでいた。
1~2週間おきにフレキシブルに2-3時間、強制的にMTGを行うことで、その間で少しでも考えが進めば、都度、棚卸し続けることになる。このサイクルは、1人では徹底できないので、この機会を活用できたのは非常に良かったと思う。
結果、
- リーダーシップのロールモデルが明確になった。
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わたしも過去の経験を棚卸したときに、忘却の彼方から、憧れの生き方をしているロールモデルが明確になった。
- 自分の経営哲学が、言語化された。
価値観のレベルで、好き、嫌い、が明確に線引きされた。
好きは、こんな生き方で成果を出したい、嬉しい。嫌いは、こんな生き方で成果を出しても嬉しくない、嫌だ。という判断軸だ。
お陰で、悩ましい問題の意思決定がずいぶん楽になった。その価値観に共感できない人の排除も楽になった。
「だれをバスに乗せるか?」という有名な問いへの回答である。
- (短期的な)組織ビジョンが明確になった。
高い次元で相互に信頼をおけるマネジメントチームを作り、社員が仕事を楽しみ、仲間のように感じる組織にしたいという漠然とした思いを、様々な角度から言語化し、施策に取り込むことができるようになった。
おもしろかったのは、「Photoセッション」だ。
プロカメラマンに、コーチングを仕掛けられながら、普段見せない自分の内面をさらけ出し、写真におさめられ、後で見返すセッションだ。
都心の街中で、突然、音楽をかけて踊ったり、おどけたポーズを撮ってみたり、いま思い出すだけでも困惑してしまうような恥ずかしい思い出になった。
途中で着替えもして、言われるがまま、いろいろなポーズをとった。本当に謎だった。
強烈な恥ずかしさ、写真を見返してのムズがゆさは、裏を返せば、自分がどれだけ周囲から見て、キャラクターを分かり易く開示できていなかったのか、痛感することになる。
ただ、嫌なものは嫌なので、その後もあまり改善がみられていないような気がするが、その日以来、自分が少しだけ開けてくる感覚が生まれた。
ちなみに、並行して、リクルート系の研修会社による、幹部研修があった。この講師の方も非常にキャラクターが面白く、憎めないキャラでありながら、ずばずばフィードバックをくれた。
そして、コーチング担当も研修講師も、両方とも同じようなことを言っていた。
要約すると、
- 圧倒的な頭のキレや思考量が、唯一無二の存在にしている。努力に裏付けられているのもわかる。
- 時として人に威圧感や劣等感を抱かせるので、そこは自覚されたし。みんなそんなに強くない。
- そのスタイルを変える必要はない。まだ若いから、そのまま突き抜けて、自分なりの経営手法を確立することができれば面白い。
誰でも言える薄っぺらい感想なのでほっとけばいいのですが、客観的にそう思われるという事実から目を背けてはいけないと強く思ったのだ。
キャンプ・アウトドアへの目覚め
わたしは自称・フルスタックキャンパーだ。
重装備で行くのが好きなので、キャンプに行くときは、基本3泊4日~5泊6日である。嫁の手伝いはありつつも、基本、自分1人でセットアップ・片付けをする。作業が楽しいからだ。
面白みは、だいたい健康編に書いた。
5. 心のメンテナンスとしての「キャンプ」
- 大自然の森、川、空に囲まれたプライベートな空間で、自力で組み立てた簡易我が家で数日間生活することで、あらゆるものが浄化される。
- キャンプにはまっているのは、それが理由だ。
- 大好きな瞬間は、ハプニング。大雨や器具の故障、不測の事態を工夫で乗り越えるために作業をしているときが幸せだ。最初のテントの組み立て、リビングのセッティング、キッチンの準備など、一通りの作業に没頭している時間も大好きだ。それが終わって、ハンモックに揺られながら飲むビールが最高だ。日の出前の早朝4時に家を出て、中央道を走るときのワクワク感も、その時にしか味わえない楽しさがある。そして、我が家に帰宅して、ライトやエアコンをつけたときのホッと感じる安堵も、なかなかプライスレスな感覚だ。
- キャンプを始めて以来、海外旅行や温泉、マッサージといったリラクゼーションに、一切、関心がなくなった。費用や時間でいえば、そんなに変わらないか、むしろキャンプのほうが高くついている気がする(いまのところ)
- それでも続けられるのは、現代社会と大自然のギャップを行き来することで感じる絶妙な中毒症状なんだろう。
- 心が浄化されると、身体も健康になる。QOLも上がり、いつもと変わらない家での日々の生活のなかに、面白みを感じられるようになる。
最初のころは、思い通りにいかないことにイライラすることも多かった。炎天下の重労働で、初めてのことばかりで、心の余裕もなくなることもあった。
ある時、ふと「せっかくキャンプに来たのにイライラするのはもったいない」と思えるようになって、イライラすることが一気に馬鹿らしくなった。
トラブルや思い通りにいかないことも楽しめるようになった。これは仕事にも通じている。
また、新しいこと、体験したことないこと、の食わず嫌いも減った。
自炊できる食事のレパートリーも増えたし、ずっとやりたくてできなかった天体望遠鏡や釣りも、もはや当たり前になった。
どんどんオープンマインドになっていく感覚だ。
神仏の世界、人生哲学の世界への目覚め
コーチング、キャンプ、と全く関係ない理由で、偶然、神仏の世界や人生哲学について勉強する時期があった。いまも細々と勉強中ではあるが、一定の視点を育てられたように思う。
とはいえ、いきなり社長が「神様が~」とか言い始めたら怪しすぎるので、周囲にあまり公言することはない。仲の良い若手に冗談半分に話をして、真に受けた様子を楽しむ程度である。
決して、怪しい壺や宝石を買ったことはないし、事業の命運を占いで決めることもない。特定の宗教を信仰することもない。
神仏の話
わたしも普通の人と同じように年一回の初詣しか行っていなかった。ただ、新卒2年目の頃からある神社に初詣に行くようになって、毎年毎年、7年連続で昇進していた。正しく生きること、自分で努力を怠らないこと、を前提に、少しだけご縁や運を頂いていたのかなという感覚だった。
ある時、長年お世話になっている美容師の方に紹介されて、商売繁盛の祈願でまた別の神社に行ったところ、翌日からおかしいくらい願い事が叶った。年上の経営者にそんな話をすると、意外と皆さん願いが叶う経験をしていて、自分なりの付き合い方を持っているようだった。
それ以来、興味を持って、仕組みを勉強するようになった。願い事は、何度も叶っている。
ブログ記事に書き起こすのは誤解を招きかねないので詳細は省きたい。日本の特殊な成り立ちや歴史に興味がある人は、一度、神様系の方を勉強してみると面白いと思う。仏教であれば、中国やインドの史実まで遡ると更に世界は広がるだろう。まずは、好き嫌い、合う合わないくらいの感覚を頼りに掘り進めるので良いと思う。
人生哲学の話
いろいろな思想家の本に触れてきたが、今回は、稲盛和夫と中村天風の話を紹介したい。
見事にJAL再建を果たした稲盛さんの真骨頂は、「アメーバ経営」と「フィロソフィー経営」の両輪経営にある。JAL再建時に、膨大な時間をかけてフィロソフィーを冊子にまとめ、社内に広く浸透させていったことで、一時、ビジネス誌やニュースで耳にした人も多いだろう。
その稲盛さんが好んで引用する言葉がある。
中村天風「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり。さらば、ひたむきに、ただ想え、気高く、強く、一筋に」
私も好きな言葉で、手帳に書き記し、定期的に見返している言葉だ。
稲盛さんのフィロソフィー経営は、彼が師事していた中村天風の影響を大きく受けたと言われている。中村天風は、多くの経営者や著名人が師事した昭和前半の思想家だ。最近では、大谷翔平が座右の書に掲げてニュースになった。
ただ、彼の本を読んだことがある人は意外と少ないのではないか。私も稲盛さんの本は読んでいたが、天風師までたどり着いていなかった。
ふと休暇中に、「新しき計画の成就は~」が出てくる原著を読んでみたいと思った。
googleで調べてみても、原著をちゃんと示した記事がなかなか出てこなかったが、何とか個人のブログで見つけた。
それは、この本である。
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その言葉の原典『研心抄』を興味本位で読んでみた。昭和20年くらいの本だ。
勝手に孫さんの「志!」と同じような文脈かなぁと思っていたが、全然ちがって、度肝を抜かれた。”人の心と身体は真我(霊魂)の道具にすぎない~”、的な内容で、真我本位に生きるための人生の指南書(実践哲学)というものだ。魂とか潜在意識とか、他人には勧めづらい本だが、当時の時代背景まで想いを馳せながら読むとなかなか楽しめる。
ちなみに、この言葉は、夢やビジョンの実現に向けてがんばれ!という意味で使われたものではなく、人として低俗な欲求や煩悶に惑わされずに意志を強く持ち積極果敢に生きよ、という意味で使われていた。確かに、稲盛流の経営哲学に通ずるものがある。
また、「新しき計画の成就は~」の前半は、「先哲曰く~」と天風の言葉ですらない、、、原典にあたるのは大事だ。
終戦前後に説かれた内容なので、当時の科学的な知見や時代背景が、多分に影響している。現代人からすると眉唾に感じてしまう記述も多い。
それでも多くの経営者が師事するだけの説得力があるのもまた事実で、わたしも読んでみた感想としては、人間として、普遍的な生活態度・思考様式に示唆がある内容だったと思う。自分の日々の生活態度に取り入れられるだけのインパクトがあった。
興味持ったひとは、ぜひ読んでみて欲しい。
雌伏シリーズ;
仕事の変化(Business, Work, Vocation)
- たくさんのハードシングスがあった。
- 沈黙の裏で起こっていた、激動の5年間を振り返る。
家族の変化(Family)
- 人生で果たすべきミッションが、アップデートされた。
- 新しい家族の話もある。
健康の変化(Physical, Health)
- 食事、運動、睡眠、人間ドック、そして、心のメンテナンスについて
スピリチュアルの変化(Spiritual)
- 昨年には、半年かけてエグゼクティブコーチングを受けて、自分の内面を掘り下げる作業もした。
- キャンプ・アウトドアにも目覚めて、自然に浸る喜びを感じるようにもなった。
- 前述のとおり、神仏の世界や、人生哲学についての勉強をしていた時期もあるし、一定の視点を育てられたように思う。
知性の変化(Mental)
- 最近、家の積読を整理していて、何の気なく手に取り読む本すべてがドンピシャに当たっているので、少しだけ紹介しようと思う。
お金の変化(Finance)
- お金と資産形成のお話です。勉強する前の若き日の自分に向けて、ポイントを羅列してみました。
人間関係(Social)
(人間関係編に書きたいこと)
- んー、一番薄いかもしれない。この領域は自分として最も関心が薄いんですよね。