ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

武井壮に学ぶ「数の論理」と「時間の価値」

Singer

 

偶然、テレビで武井壮の話を見ました。「林先生の初耳学」で、ニート向けに授業をするという内容でした。

俳優をやっていた兄の死から遺志を受け継いで、30歳を過ぎてから芸能界を目指した話です。芸能界に入るからにはTVに出続けられることをゴールに、1週間分の番組欄を分析して、「ニュース」「動物」「スポーツ」などの人気ジャンルを抽出。その習得に向けて、毎日研鑽した結果、オンリーワンのコンテンツになれたというサクセスストーリーを引き合いに、ニートたちに向けて「いま自由に使える“時間”が強みになる」と力強くメッセージしていました。

 

番組を見る前まで、武井壮のことをすごくクレバーで努力家な印象しかありませんでしたが、生徒役のニートたちがみんな話にどんどん引き込まれ、納得してゆく様子を見て、彼の本当のすごさは、相手の懐に入り、納得させてゆくだけの、どこまでも相手目線のプレゼント思考、バリュー提供思考にあるんだなと思いました。

 

ググれば彼のインタビューがたくさん出てくると思います。

 

 

例えば、お笑い芸人や有名歌手と友達になって、彼らの話を全部録音して、シャドーイングして身につけた話。

武井壮は、ただ徹底的な努力をしたという話だけでなく、芸人や歌手たちが凄いのは「求められる相手の数」であって、トークが上手い、歌が上手い、という「質が良いからではないんだ」と気づきます。

日本一、世界一の上手さをただ究めるのではなく、多くの人に求められるものを提供できなければいけないのだと。

 

質ではなく、数。

 

言葉にすると当たり前ですが、これに気づいた時には、恐らく、天動説から地動説にシフトしたくらいのインパクト(コペルニクス的転回)があったことでしょう。

 

僕もともすると無意識に、自分のスキルや能力に、ただ直線的な向上を求めることがあります。それを理想として、突き詰めてゆけば、いずれ競争力を持ち、他人からも必要とされるようになるだろうと。そう考えている人も多いと思います。

 

一方で、芸人や歌手は、「どうやったら売れるのか?」を徹底的に追求しています。たくさんの苦労の末、多くの人から求められる、拍手をもらえる、見てもらえるようになったものは、「芸」と呼ばれます。

 

ビジネスマンとしては、経営者だろうが、サラリーマンだろうが、資本家だろうが、芸事を身につける必要はないし、必ずしも人気商売を目指す必要はありませんが、売れる必要がない人も、

 

時間の価値を最大限活かして、数の論理で勝ち切る。

 

というメソッドを、覚えておいて損はないと思います。世の中に価値を生み出すことができなければ、持続的に、価値をお金や信頼、資産に転換してゆくことはできませんからね。

 

シンプルに、価値を生み出す方法論、を突き詰めているのが武井壮なんだという発見でした。

 

 

 

やり続けることの大切さ

Penguin Number One

前日の記事で、市場や競合の理解って、なかなか難しいよね、という話を書きました。予測や解釈が間違うだけならまだしも、自分の経営判断をそれで間違えてしまっては、元も子もない。ヨメないところは、正直、様子見するほかなく、あまり参考にしないのが良いことを学びました。

 

たまに参考になるケースは、戦略や打ち手の方向性は間違ってないし、アイディアも素晴らしいのだけれど、「やり切れていない」「勝ち切れていない」ものを見つけたとき。

 

たかだか半年でも、人は簡単に諦めて、少ない資本にもかかわらず、さらに他のことに手を広げ、打開したくなります。

 

同じことをやっていたド競合や先駆者が、気づいたら、勝手にリングを降りていた、という経験が沢山ありました。

筋はいいけど、コラボしている相手が微妙だったり、手広くやりすぎて全部微妙になっていたり、という事業・サービスもたくさんあります。

 

 

有名な話として、

Googleは12番目の検索エンジンだった 。

facebookは10番目のソーシャルネットワークだった。

iPadは20番目のタブレットだった 。

という。

 

 

必ずしも最初にやった、先発組で取り組んだ、ファーストペンギンが成功する訳ではないのです。初期にうまくいっているように見えたサービスや企業が成功する訳ではないのです。

彼らが成功したのは、時流に加えて、運にも加えて、正しく努力しきったことにあります。

 

 

嘘みたいにみんなが早々に諦めるので、「正しくフォーカスして、やり続ける」だけで勝ててしまうんですよね。もちろん、正しい土俵で、正しく戦っていることが大前提です。

 

みんな意外と「捨てること」「集中すること」「継続すること」の価値を軽んじています。

 

新しいことの方が、やっていて面白いし、採用も広報もしやすい、メンバーマネジメントもしやすい。投資家や家族友人からのアドバイスやプレッシャーもたくさんある。筋が悪そうなら、すぐに諦めて次々新しく仕掛けたくなる誘惑がたくさんあるのです。

 

 

うちの会社では、この3年間、ビジネスモデルのレベルで新しく取り組んだことは1つもありません。3〜4つの事業モデルを固定して、そこにしっかり集中して、ひたすら、それぞれを伸ばすことに専念してきたと思います。

そして、ようやく昨年末に全ての事業がバシッとはまり、会社全体でも大きく利益を出すことができたのです。

 

途中で何度も誘惑がありました。先行していた会社が、ほかの土俵に手を広げる姿を、羨ましく思いながら、歯を食いしばってスルーしてきました。辞めた幹部社員もたくさんます。それでも、勝てると見込んだ土俵で、当初の大仮説を進化させながら勝ち切ることに集中するのです。

 

 

当たり前ですが、1つの土俵で勝ち残るだけでも、いろんな工夫やチャレンジが必要です。だから、ビジネスモデルは固定していても、飽きることなく、むしろ、偶然や運を味方に、新しいことに取り組んできました。

難しかったのは、それが土俵際に収まるチャレンジングな取り組みなのか、土俵を変えるような取り組みなのか、を見極めながら、素早く優先度を判断して、見切りをつけていくことです。やっていくうちに、どうしても刹那的に手を出したくなる施策が出てくるのです。わたしも何度も失敗しました。

 

ただ、やり続けることで勝つことを知っていたので、時に、社員をデモチさせながらもストップさせたり、大変で気が乗らない大事な事柄に向き合わせたりをしてきました。

 

それができたのも、

これをやり切ってダメなら、世界中の誰も成功しない!

自分以外に、これを成功まで持っていける奴はいない!

というところまで、苦しみながら、迷いながらも考え切って、腹をくくることが必要でした。

まだ煮えきらず、判断に迷いがあるときは、どうしても粘りが甘くなります。考え切れていない仮説は脆いです。また、腹をくくるだけなら、アホでもできるので、蛮勇と確信を取り違えないように注意しましょう。

 

 

もし、いま、自分がやっていることがうまくいっていないとき、「やり続けることで勝てるかどうか」、一度立ち止まって、仮説の詰まり具合を確認してみると良いと思います。

そんな話でした。

 

 

 

市場や競合を正しく分析するのって意外と難しい

Fighting frenzy

仕事柄、各事業が対面している業界や環境変化について、日々、キャッチアップしているのだけど、その解釈が思いのほか難しいんですよねー、という話をしたいと思います。

 

年末年始に、みなさん振り返りや構想を練ると思うけど、私も改めていろいろ考えてみました。

ここ数年間がんばってきたし、その間にたくさんの経営判断と意思決定をしてきました。その時の前提となるインプットと解釈を思いつくままに棚卸しして、正しかったのか、盛大に誤解していたのか、とかを考えるんですよね。

そこで痛切に感じるのは、ベンチャー界隈の栄枯盛衰や、既存の大手事業の成長・収益について、半年〜1年くらいで驚くほどコロコロ評価が変わるので、意味のある外部環境の分析すらも難しかったなぁ、ということです。

 

前提となるインプットは、ニュース記事やインタビュー記事、上場企業ならIR開示資料などなど多岐に渡ります。ほかにも、出資先からの情報、転職した元社員からの情報などから、内情をよく知ることも多いです。

たいていのスタートアップは、残念ながら、派手なニュースや社長のパフォーマンスから受ける印象と、ビジネスの実態はかけ離れていることが多いです。数字も絶好調!と聞いていた会社ですらも、数ヶ月後に苦戦している話を聞いたりする。

 

なので、ビジネスのトラクション(売上、MAUの成長)があるかどうかは、投資家目線でより重要視されてきているし、同時に、しっかりトラクションが出ている会社ほど時価総額(valuation)があがってきています。

 

2019年後半にかけて堅実な会社は、ひとしきりIPOしきってしまい、怪しい会社やハリボテの会社との勝敗が明確についてしまった感もあります。また、明確なトラクションがある会社の大型調達も一巡しました。

 

 “Fake it, until you make it.” というお作法は必要だとは思うものの、セラノスやWeほど悪質ではなくとも、日本国内でもチラホラ大型調達済みの会社で破裂しかけている、ステークホルダーが逃げ出している会社も出てきまた。

note.com

 

 

有名どころでは、社長退任のF社、逆ザヤユニコーンのP社、もはや老舗となりつつある動画銘柄3〜4社、などなど、出口が見えなくなってきています。

ただ、そんな会社ですらも、いまオワコンとして断罪することはできないのです。バーンレートを調整しながら、再浮上するだけのチャンスはまだまだあるし、実際、半年後に絶好調になった事例も山ほどあるわけです。

最近上場した会社も、当然、創業当初から一本調子なはずもなく、オワコンと呼ばれながら足掻き続け、成功する道を辿っています。

だから、私も目を離さないし、アンテナを張り続け、自社の競争戦略に活かそうとしているわけです。

 

(次の記事に、つづきます)

 

 

人口減少問題を自分事化する

Talk

2045年には、東京以外の都道府県すべてで、人口が減少する。
辛うじて人口キープできる東京都ですらも、高齢者で溢れかえるという。
人口減少問題と高齢化社会の掛け算によって、日本社会は、一気に未体験ゾーンに突入する。

何年も前から叫ばれ続けていて、もう、2020年になってしまった。
もっとリアリティを持つべきではないかと思う。

見方を変えてみれば簡単だ。
2020年現在 40歳以上の人が、2045年(平成57年)で65歳以上に該当する。
つまり、現在、40歳前後のバリバリ社会で活躍している人は、2045年には今度は自分たちがその問題の高齢者ゾーンに突入するのだ。
健康寿命が延び、働き続ける人も増えるだろうが、せいぜい10年程度だろう。
日本社会が問題に直面する2040年以降、まさにその問題の真っただ中に放り込まれるのが、自分たちなのだ。

そう考えると、どこか他人ごとのように感じる統計も自分事化しやすいのではないか。


正直、僕はゾッとする。


65歳までに自分なら何ができるのか?
65歳以上になったら自分はどう生きていたいか?


65歳を過ぎた自分を想像してみよう。

信用経済がもっと進むだろうし、社会的地位にしがみつく歳でもないだろう。医療も今よりも発達して治癒できる難病も増えているだろう。景気の山谷をもう2回くらい体験したうえで、資産形成に対する認識も大きく変わってくるだろう。中国よりもインドの発展が目覚ましく、付加価値の低い仕事は淘汰され、まったく新しい仕事が生み出されているだろう。スペースコロニーへの移住が実現すれば、国の概念も変わるだろう。。。

マクロの変化に必死にしがみつきながら、きっと自分の子、孫へと愛情のバトンを繋いでいるだろう。国を変える、社会を変える志も、その時には、どう死ぬのか、家族に何を残すのか、という視点に移り変わっていくだろう。地域のコミュニティや、趣味や友人を大事にしていることだろう。
決して、40代、50代の頃に、悔いの残るような中途半端な駆け抜け方をするはずはない。何を成し遂げられただろうか。


そんな長期予想を膨らませて、自分の人生の経営方針と、日本国の経営方針とに一瞬思いをはせる。


元ソース
国立社会保障・人口問題研究所
日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)
www.ipss.go.jp

参考記事
www.nippon.com

驚きを含む正解が、感情を動かす

Think different wall

クリエイティブディレクター原野さんの記事を読んだ。

共感しかない。
ハッとするようなインサイトを練り上げたいものです。

「やっぱり広告はインサイトに基づいてないと。つまり『意味に対する企て』が必要なんです。
(中略)
広告には『驚きを含む正解』がいるんですね。人は感情が動くとき、笑ったり泣いたりする前にまず驚くんですよ。その驚きをどう生み出すかがクリエイティブの技術なんだと思います。で、その技術を高めるためには、これまで人類が創造してきたものに対する愛と尊敬が必要なんです。それはシェークスピアだったりモーツァルトだったり、歴史上のあらゆるクリエイティブの成果ということなんですけど。

bnl.media