ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

ターンアラウンドの難しさ

ターンアラウンドの難しさ

http://www.flickr.com/photos/30974608@N02/15638505071
photo by TerryGeorge.
さて。今日はいまの近況報告ついでに、また勢いの即興記事をアップしてみようと思います。徐々にブログ記事のトーンも変わってきていますが、まぁ相変わらず、青臭さ全開の文章なのでご容赦ください。


10月で経営企画部長になって1年、執行役員になって半年が経過しました。先日、31歳にもなり無常な時の流れを感じます。
一番大きく変わったことといえば、「健康」に対する取り組みです。がむしゃらに働いた20代も終わり、より成果を出すことに集中したい30代を迎え、一回くらいは本気で体力づくりをしておく必要があると感じていました。が、普段忙しく仕事をして充実していると、なかなか最初の一歩を踏み出せずココまできてしまいました。
まだ若いのに保守的になってどうするんだ?とか、ITベンチャーの経営に携わりながらそれでいいのか?と、そこは自分自身が一番よくわかっていて。。。言い訳しても仕方がないので、今回は、ただ何も考えずに始めてみる、とりあえずやってみよう、という精神でいろいろ開始しました。

禁煙

2014年4月のある日から開始し、いまのところ大成功しています。よく禁煙者からは「最後に吸った煙草を覚えている」と言われますが、そんなに思い詰めて禁煙を始めたわけではないので、正直、いつ始めたのかすら忘れています。
忘れた理由は簡単で、気軽に始めたからです。また別の記事にしたいと思いますが、習慣化、を成功させるには、ポジティブな目標設定だけでは拘束力が弱く、むしろ変に意志の力でやろうとしないことが重要です。ただただ何も考えずに、「決める」。そして、「決めた約束を守る(のが男だろう)」。仕事と同じで、納期と品質は絶対に守る。これがコツです。
名付けて“脳死”メソッド。とにかく「考えない」。考えたら負け。だから禁煙も、その日にふらっと開始してみました。
そのうち、歯を磨くのと同じくらい習慣化されて楽になります。というか、約束を守らないと気持ち悪いくらいになるはず。
元々そんなに喫煙していなかったのでは?と言われるが、(自慢することではないが)12㎎を1日2箱、10年、なので、そこそこ普通だったと思う。
当然、禁煙開始直後は辛かった、、、が上記のように意志の力に頼らず(←ここ重要)、自分にコミットすることで余計なことを考えずに済むので余裕もありました。

人間ドック

3年連続で受けました。うち2回は自費です。出費は大きいですが人生の長い時間から考えて、イマだと思ってやってます。
健康意識が皆無だったむかしの自分からすると驚くべき変化です。別の見方をすれば、社内での地位も上がり、社会的な責任も増えたなかで、心の余裕も生まれてきたのかもしれません。
健康であることを証明して、より一層、仕事ライフに打ち込むことができます、一種の保険みたいなものですね。

筋力トレーニングと食事管理

facebookTwitterの方で発信していますが、4月下旬から本格的な筋力トレーニングを開始し、人生で初めて体作りに集中しています。
具体的には、週3回のバーベルトレーニング(ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)と、食事管理(総カロリーコントロールと、タンパク質の摂取量が重要)を行っています。最初のころは外国人のトレーナーの方にオンラインでアドバイスを受けながら3ヶ月間、まずはフォームを作ったり習慣化するところから始め、早くも6か月が経過しました。
夏季休暇や休息日を挟んで、現在、トレーニング回数はDay52まで来ています。主に下半身を中心に、如実に筋肉量が増大してきました。


なぜこんなにも自分を変えにいっているのでしょうか?

なぜいま体作りなのか。

会う人みんなに聞かれますが、「仕事をもっと頑張るため」と答えています。
本当はもっと、社会にインパクトを与えるため、とか、天のお告げで目覚めた、とか、カッコよく(?)言えなくはないですが、シンプルに「仕事」という言葉にしています。
それは、自分の長い仕事人生、を考えてのことでもあり、これから更なる難局を迎える会社の未来を胆力で切り開くためでもあり、その中で自分のパフォーマンスをもっと高めてゆくためでもあります。
理想的には、アスリートのように日々の体調管理を徹底して、常に最高のパフォーマンスを発揮できるような再現性のある方法論を会得したいと思っています。まだまだ研鑽の余地はあると思いますが、出だしは良好かなと感じています。

ターンアラウンドとは。

じゃ、「仕事ってなによ?」と。


僕には、究極的に、中長期で、人生をかけて成し遂げなければいけない事があります。


それとは別に、目の前の仕事で成果を出し続けるからこそ、辿り着ける境地もあります。これもまた真実です。


今回は後者の話。
いまの会社をターンアラウンドさせることが、目下の目標になっています。いまの時期、どこの会社でも来年の計画策定に追われていると思います。
弊社でも現場での数値策定作業がいよいよ本格化してきており、先週からデイリーで速報数字を見ながら修正をかけていくプロセスに入っています。
幸い、事業計画の数字部分に関しては、3年前の管理会計導入からシステム化が進み、財務・経理門主導で進められるほどにオペレーションが洗練されてきています。この数字策定が安定しているお蔭で、経営の安定感や先を見据えた計画策定&修正のサイクルがうまく回り始めているように思います。


経営企画、というか、僕目線では、日々の経営討議を踏まえつつ、改めて予算策定のタイミングで、社外取締役含めて経営メンバー間での大きな方向性をハンドリングしなければなりません。
この数年間の業績トレンドを見れば言わずもがなではありますが、ターンアラウンドに向けて本当の本当の正念場に来ている認識です。


思えば、1年以上前の経営合宿で、私のほうから改めて経営の中期シナリオを提示し、中期方針の討議を行いました。
その際にかなりワーストシナリオを置き、危機感を醸成したつもりではありましたが、いま思えば自分自身も理解が不十分だったように思います。
企業体が大きくなればなるほど、目の前に火の粉が迫ってからようやくお尻に火がつくのは、ある種仕方がないな、と。
経営者は、いかにこの危機意識を経営メンバーや組織に浸透させて頑張らせるのか、が本当に本当に重要なのですが、どれだけオーナーシップがあれど、(僕自身もそうでしたが)リアルに状況を想像できるケースというのは稀なんじゃないかと思います。
1mmでも早く、経営のリスクや危機を察知し、対処することが経営の務めではある訳ですが、対処の切迫度合いや真剣みは、どうしても程度差が出てしまいます。


営業利益が微々たるもので風が吹けば吹き飛んでしまうような小規模の頃は、P/Lの動きが即時に企業存続に直結してしまいますし、社員数が少なければ一体感を持って、危機感を醸成しやすいでしょう。しかし、収益を生み出す事業がまだ数年単位で継続でき、財務基盤も安定していれば、どうしても企業存続にかかわるレベルでの危機意識は持ちづらいものです。
もう少し想像を膨らませると、総合商社や大手自動車メーカーのように、世界中に雇用をかかえ社会的責任も大きい企業になってしまえば、逆に多くのステークホルダーからのプレッシャーも相応にあるでしょうし、サラリーマン経営陣としての評価へのセンシティビティも高いでしょうから、別の危機意識が醸成されるのかもしれません(あくまで想像です)。とはいえ、「大企業病」ともいえる、危機意識の欠如、は、如何ともしがたいメカニズムで、経営を蝕んでゆきますので、まぁどんな会社も同じ構造にあると思って良いでしょう。


まとめると、C/FやB/Sが年単位で安定していると、P/L的な短期の浮き沈みによって経営の危機意識を持つのは、別の第三者的目線でのプレッシャーが必要ということです。
気づいてしまえば当たり前ですが、僕的には経験を通じて初めて腹落ちできた発見でした。
家計に例えればわかりやすいかもしれません。貯金が10億円ある人は、仮に1-2年仕事を休んで赤字の家計でも気にしないのと同じです。10億円が大きすぎるなら、少なくとも5年間は生活できる資金=5,000万円の貯金で想像してみてもよいでしょう。
ま、普通の経営感覚で言えば、何を言っているんだコイツは、となりますわな。ITベンチャーという少し特殊な株主構成で、想像を絶する時間軸で物事が変化する世界で勝負を続ける経営だからこそ、この当たり前の事実に気づくのが遅れました。


「ターンアラウンド」という単語自体は、業績低迷の本当に初期に私のチームで使い始めた言葉でしたが、ようやく実現に向けた山の高さや難しさわかるようになってきました。それは、トップラインやボトムについて誰でも思いつくような打ち手をあらかた検討し尽くして、着手もしてみてダメだった結果を積み上げて、ようやく実感するような肌感覚でした。
同時に、「経営の危機意識の醸成」についても、まさに自分自身の認識が甘かったことで、不十分さと構造的な難しさを痛感しました。世の経営者がそこに腐心する本当の理由も経験に基づく理解ができました。

当たり前だけど、苦しい。

ここからは未来の話です。
いま現在進行形で、半年後、1年後の精緻な計画を作っています。当然、僕の職責として、最悪のシナリオも想定しながら経営の議論の足場を固めています。固めてゆく過程で、さらに自分たちの課題認識がアップデートされ、仮説を進化させてゆくステップをひたすら毎日回しています。
当たり前ですが、シナリオの蓋然性も固まってきますので、未来の絵姿もよりクッキリ、明快に見え始めています。それは数字上の話だけではなく、事業の展開状況や組織・人材の活性度合なども含めて、ボンヤリとしていた絵がこの数日でありありと見えてきました。
結果何が起こるかといえば、よりターンアラウンドに対する厳しさを実感することになります。


いままではある種、やり尽くせていないことも多く、時間的余裕と打ち手のアップサイド余地(可能性)に目を向けながら、ある種の楽観を持ちながら爆進していれば良かったのですが、これからは着実に成果を積み上げることを求められる段階に来ました。成果を出せなければ、ワーストシナリオに近づいていきますので、必死にもがきながら常にpivotし続けて当たりを見つけるしかありません。更に言えば、非常にシビアにみれば、この苦しい過程を繰り返した結果、本当に報われるのかどうかわかりません。
これが本当に苦しい。逆に言えば、いままでは楽だったなぁと。
いつ水面に上がるのかわからない中を、息を止めて泳ぐようなものです。勇気をもって飛び込んだ先にゴールが見れればまだしも、ゴールを自分でこじ開けるところまで踏ん張らないといけません。それだけ強い覚悟をもって、事業に取り組む人間がいなければ達成できないものだと思います。


株の格言に、「まだはもうなり、もうはまだなり」とあります。株の売買のタイミングのことを指していますが、これが結局、事業にも当てはまります。
まだ大丈夫、と思っていると、もう危ない。
もうそろそろ反転するか、と思っていると、まだまだこれから本番、と。
全く同じです。
なので、これからが本番で、長い長い戦いが始まる覚悟を徐々に作りながら、年末に向けてまずは乗り切りたいと思っています。

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