ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

やる気とファイティングポーズ

yo4ma32012-04-08
コンサルティングファームに入社する人は、良い意味で”手を抜く”ポイントを覚えてゆきます。
人間24時間ぶっ通しで、集中し続け、頭をトップスピードに回し続けることは不可能ですからね。
答えが見えない/答えの出し方がわからない手探りの中でも、

  • 自分が何時間でどれだけのアウトプットを出せるのか?

という当て勘を働かせながら、気を休めて、自信を持って休憩を取るのもプロフェッショナルの必須スキルです。
極端なことを言えば、1日に頂いているフィー(パーディアム)に対して、自分の1日のバリューを最大化するために、いつ、どこで、どんな休憩を取る(少しペースダウンする)ことが最適なのか?を考えながら、トップスピードで頭を回転させるタイミングと、軽く流しながら検討を処理してゆくタイミングを使い分けています。厳密には、タスクや検討の優先順位に沿って、急ぐところと、後回しにするところを線引きしています。細かい人では、1時間ごとにワークスケジュールを立てています。
こうしたことができて初めて、自分のバリューを最大化するために巧く“手を抜く”ことができるようになります。入社当初からは到底想像できないような遠くにある境地だということを知りましょう。


そこを勘違いしてしまい、入社当初からショートカットしようとすると、やる気が空回りする状態になります。
周りにこんな人はいませんか?

  • ファイティングポーズを取り続けて長時間働いているように“見せ掛け”て、単にサボっているだけの人
  • 仕事をお願いすると頼もしい反応があり、何か手を動かしているように見えるのですが、一向に期待通りのアウトプットが出てこない人
  • 上司からは「期待通りのアウトプットがなかなか出てこない人だな」と思われている人

これらは、「やる気」はあるが、「論点」を外してしまっている状態です。
本人は、「これだけやる気を見せているし、ファイティングポーズを取り続けているので、もっと評価されていいんじゃないか?」と疑心暗鬼になりがちです。また、どれだけ頑張っても評価されないので、睡眠時間の短さ以上に、精神的・肉体的にどんどん疲弊してゆきます。
負のサイクル、といえるでしょう。

質の高い仕事をするためのワークプラン

入社当初は「自分の限界」がわからないので、朝一番から目一杯フルスロットルで頭を回転させます。それこそ、頭に血がめぐる音が、耳で聞こえるくらいに、カーっと目の前のことに取り組む。


最初はそれでいいんだと思います。
いずれ、睡眠時間が短くなり、最初の頃のような集中力や、MAXスピードの頭の回転が長時間維持できなくなります。また、半端ないスピードで検討が進化してゆくのを見るにつけ、このやり方ではダメなんだという限界に気づきます。
そこから、ちゃんとアウトプットを出しながら、ちゃんと早く帰れるようなサイクルにもってゆくまでに、長い道のりがあるのです。。。


質の高い仕事をしながら、ワークライフバランスを保つ。社内でもきっちり高く評価される


こんな仕事の仕方が理想です。
そこを目指すがために、冒頭に述べたとおり、入社当初から「要領よく」やろうという行動原理で動くのは良くありません。
効率を追求するのがダメというわけではなく、むしろ常に追求しつづけるべきなのですが、
とにかく最初は、「本当に考えるべきこと・やるべきこと」を見極めるための「考え方を身につける」方が圧倒的に大切です。
効率や要領ばかりを追求した人で、立派なコンサルタントになった例はありません。
急がば回れ、です。本質的な基礎部分を、入社1年でしっかり形作りましょう。


新入社員の方には、
「納期を守ることは、プロフェッショナルとして当然のこと」
「そこで効率を追求するのは良いことだが、小手先のテクニックばかりに気を取られてはいけないよ」
とよく最初のころに話をします。
期待通りのアウトプットを、納期内に出す。
これは言うが易しで、

  • きちんとプロジェクト全体の論点を把握すること
  • 自分に求められている期待値を理解すること
  • 期待値に答えるためのタスクを整理できること
  • コンティンジェンシーまで含めて、タスクを設計できること
  • 工数を正確に読んで、ワークプランに落とせること
  • 適切なタイミングでコミュニケーションが取れること
  • 最短でタスクをこなしてアウトプットに結びつけること

これだけのことを完璧にできて、初めて納期通りに、期待通りのアウトプットを出すことができます。
特に、リストの前半、本当に考えるべきこと・やるべきことを見極めて、タスクに落とすところ、でほぼ仕事の質が決まります。
単に手を早く動かすだけの“効率”や“要領の良さ”ばかりを追求していては、いつまでたってもできるようにならないことばかりです。だから、こういう人は“手を抜く”ポイントも外してしまいます。

ファイティングポーズを取り続ける意味

人間ですからモチベーション(やる気)の起伏が一定生じてしまうのは仕方がないことなんだと思います。
それでも、モチベーションを常に高いレベルで維持することは、必須のスキルです。自分に合った作法や、休日の時間の使い方、仕事に入るまでの感情のコントロールなど、試行錯誤で見つけてゆくものでしょう。
なかでも、「常にファイティングポーズを取り続ける」ということは、モチベーションと表裏一体の関係にあります。どうしてもやる気がおきないときに、強制的にファイティングポーズを取り続け、どうにか仕事を片付ける、こんなことも必要でしょう。


ただ、ファイティングポーズを取る本当の意味は、それだけではありません。


プロフェッショナルファームで、ファイティングポーズを取ることとは、「どんな無理難題と思われるテーマや論点でも、最後に自力でやり切るまで諦めないこと」を意味します。
人間弱い生き物なので、どうしても最後は諦める部分ができてくるでしょう。そこを踏みとどまって、きっちり仕上げられるかどうか。
上司やお客さんからのフィードバックに対して、諦めずに喰らいついて、最後まで粘りきれるかどうか。
自分の最大限の力を発揮して、アウトプットに責任を持って、デリバリー仕切る。
答えがない世界で、自分なりの基準を持って、アウトプットのクオリティを規定する。


「知らないから、できない」
というのは、経験年数が浅くても、通用しません。
(「わからないこと」が「できる」凄さについては、こちらの記事にも書きました。)


やる気は満ち溢れているけれど、ファイティングポーズを取り続けられない人は多くいます。
どこかで諦めちゃうんですね。
その手離れが早い。
チームで仕事をしていると、一瞬でその姿勢がわかります。


新人の方の評価で、大きく分かれるのは、このファイティングポーズです。
日中にタスクを抱えているはずなのに、手が動いていない、頭が働いていない、こんな状態が一瞬でもあるようなら、注意しましょう。上司は、「できないのは当たり前」だと思って仕事を振ります。そこで、どれだけの地力を見せることができるかを見ているのです。


「自分の限界」を見極めて、
自分のバリューを最大化するためのワークプランを組み、
最後まできっちりファイティングポーズを取り、
アウトプットを出し切る。


この考え方と姿勢を身につけたうえで、初めて、上手に“手を抜ける”ようになります。