ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

経験は、熱いうちに、言語化せよ

yo4ma32011-03-21
鉄は熱いうちに打て。
同じように、


経験は、熱いうちに、言語化せよ。


これは、驚くほど当てはまる。
僕自身、過去のブログ記事やTwitterの発言を読み返しては、その当時、自分が何を考えていたのか発見して、ハッとすることが多い。
ブログもTwitterも、このためにやっているようなものです。
ちょうど、この3連休は、プロジェクト終盤ともなり、じっくり内省する時間をとれたので、エントリーに残しておきます。


コンテンツ:

  • 経験を振り返ることの必要性
  • ちょっとだけ振り返る
  • では、何が課題だったのか?
  • 土台となる「感情マネジメント」
  • アップワードやペイ・フォワードを通じて、自己認識を深める
  • 「言語」優位の思考から「直感」優位の思考へ
  • 中村俊輔「察知力」

ちょっと地震や原発の話題は食傷気味ですし、ここらで、将来の自分に向けた内省エントリーです。

経験を振り返ることの必要性

コンサルタント1年目は、本当に、禿げ散らかすほど、悩んでいたので当時は猛烈に記事を書いていました。
この3月末で、ついに丸3年が経過します。4月からは、4年目。


この仕事、ご存知のとおり、2-3ヶ月のプロジェクト単位で、業界やテーマの全くことなる仕事を、猛烈な勢いでこなしてゆきます。
あるお客さんに言わせると、「他流試合をずっとやってるみたいだね」と。そのとおり。
社会人としての基礎もままならないまま、いきなり、総合格闘技の世界で、他流試合ばかりしているようなものです。


したがって、もの凄い成長カーブで、ほんの1ヶ月前に自分が考えていたことを思い出せないほど、短期間で激変してゆきます。
もちろん、その変化を常に感じている訳ではなく、あるとき気づくとそうなっていた、というだけですが。
当時のことを、きちんと言語化しておかないと、自分自身の糧として、消化しきれません。


経験だけでは、引き出しは増えません。
その経験を未来にどう活かすのか?
自分に足りない部分=課題を補うにはどうしたら良いのか?
自分に出来る部分を、他人に真似できないレベルにまで高めるにはどうしたら良いのか?
こうした意識を持った上で、言語化しなければ、引き出しは増えないし、真に成長したとは言えません。
経験はあくまで、きっかけに過ぎないのです。


振り返ると、ブログの更新を怠っていたせいで、ここ1-2年の内省が、言語化仕切れていない感があります。
Myノートには、仕事の内容から、自分のことまで事細かく書き残してありますので、節目節目には、よく読み返しています。
ただ、ブログの記事にすると、自分でモヤモヤしていたことを、客観的に言語化できるので、また違った内省結果となります。
特に、3年目の1年間は、プロジェクトも面白いテーマばかりで、いっきに加速してしまったために、実は振り返り切れていないのではないか、と気持ち悪さが残っています。


言語化できていないことは、身についていないのも同じ。
同様に、言語化できていないことは、壁として認識されず、超えることができない。
課題を言語化しなければ、成長はできない。


そういう考えがベースにあります。
こんなことは、年末年始にやれよー、と思いますが、得てして、頭が活性化せずに言語化できないものです。

ちょっとだけ振り返る

では、この1年、何をしていたのか?
Twitterにも何度かつぶやきましたが、ジェットコースターのような日々でした。

yo4ma3
日本を代表する消費財メーカーの生産管理に、グッと深く入り込んでいたと思ったら、
10年、20年後を見据えた国家戦略を考え、次に、グローバルに展開するコングロマリットの中長期的な事業機会に思いを馳せ、
今回、超ニッチ領域で奮闘する片田舎の町工場に入り込んだ。

http://twitter.com/#!/yo4ma3/status/26159599200


この後、さらに、より広い国家戦略を考え、中国にも出張し、また異業種の新規事業戦略に取り組んでいます。
本当にこの1年は、ピュアな戦略もののプロジェクトが多く、非常に素晴らしいクライアントと、社内のチームメンバーにも恵まれました。


本音ベースで言うと、自分としては、そこまで順調にdevelopしている感じは掴んでいませんでしたが、社内での周囲の評価は上がり続け、正直、戸惑いも感じています。
それは、自分が「成長に対して、人一倍、貪欲であること」が影響していかもしれません。


自分のパフォーパンスに、満足してしまうのが怖い。
もっと上を目指さなきゃ、という「欲求」が薄れてしまうのが気持ち悪い。
常に、そう思いながら、次の壁を探している。
そして、壁は高ければ高いほど、苦しいけど充実感がある。


これが、僕の基本的な行動様式です。
その意味では、この1年は、コテンパンにやられる時期と、成果がクライアントに評価されて充実感を得る時期と、うまく交互に訪れてくれたおかげで、精神的には安定した年でした。
どちらか一方に偏っていると、自分が成長しているかどうか、手応えを掴めないので、努力が継続しません。
こうした時期が交互にくるような、適度な課題設定と、クリアしたものを発揮してゆくたゆまぬ努力を、自ら意図的に創りだしてゆく必要があります。
具体的には、自分のアサインされるプロジェクトを、自分の課題感と、一緒にやるヒトの軸で選定してゆくことです。


もちろん、100%自分の思い通りにならないことが多い。
僕の場合も、この1年のプロジェクト・アサインは、ほとんど運の要素が強かった、と感じています。これもご縁だな、と。
それに、このエントリーのきっかけの通り、「課題設定」をクリアにしきれていない感触を持ち続けていますので、プロジェクトもその軸で絞り切れていません。

では、何が課題だったのか?

前述のとおり、過去のタイミングに、自分が考えていたことには戻れないので、総じて、ずっと抱えていた課題感を言語化してみます。
大きく2つあります。


まず1つ目は、
1.大きなイシュー(論点)を自力で閉じきること
大きなイシューとは、クライアントの部長や役員の方が、本当に気になっている大きな論点です。
プロジェクトの検討上、片付けなければいけない中小のイシュー(案件)については、一人前のコンサルタントとして、閉じ切ることができます。
その次元をさらに上がって、マネージャーやパートナー・プリンシパルが、一番気になっていることに対して、「ほう」と思ってもらえる解を示すこと。
途中の検証過程を含めて、ほぼ自力でやり切ること。
そして、それをクライアント含めて納得させきるだけのoutputを作り、コミュニケーションをし切れること。
これを指しています。


2年目と3年目では、このイシュー(論点)の大きさが、段違いに大きくなっていました。
イシューが大きくなると、クライアントの意思決定に与える影響が、大きくなります。


当然、「本当にそうか?」「これを言い切ってしまって、大丈夫だろうか?」という、不安も比例して大きくなります。
多少、リスクを負ってでも、Goなのか?NoGoなのか?説得しきれなければいけません。
その判断を、明確に問われるようになった、というのが3年目です。
(「Judgment」と「Communication」、と理解しています。)


また、2009・2010年新卒入社の1,2年目の後輩を、部下として使う場面も増えました。
それまで、自分より上の人がやっていた「最後の砦」となる判断を、、僕がリスクを負って判断することが多くありました。
都度、マネージャーに確認する訳にもいかないので。


自分で考えられること、考えられないことを見極め、適切なタイミングでシニアメンバー/ジュニアメンバーを巻き込んで仮説進化/検証方法進化を行うことが求められます。
(「Engagement Control」:メンバーのアウトプットの質を向上できるように工夫すること、と理解しています。)


クライアントに影響を及ぼすような重要な判断を、日々、積み重ねてゆかなければいけない緊張感。
時に間違い、上にも下にも刺され、struggleしながら確実に成長してゆきいます。


2つ目は、
2.面白い仮説を、より短時間で考えること
戦略コンサルタントとして、尽きることがない、永遠のテーマです。
ピュアな戦略系プロジェクトが多かったおかげで、so what ? や why so? だけでなく、1つ目で述べた、クライアントの意思決定に大きく影響を与えるような論点に対して、明確に「仮説」を求められるようになりました。
その仮説には、全社戦略、新規事業戦略、マーケット戦略、といった戦略の名のつく“解のようなもの”だけでなく、それらを骨太に支える、消費者の行動様式や、時代の流れ(潮流)に対する洞察も含まれています。
(「Analytical」&「Hypothesis Construction」:仮説構築力を磨くこと、と理解しています。)

  • 視野を広げ、視点を高めること
  • 骨太なロジックとそれを支えるファクトを見極めること
  • インプレッシブなファクト/ディテールを見極めること

これらを課題感としてもっています。
もちろん、以上の2点だけでなく、細々した課題は、山のようにありますが、いずれもこの2つの結果に紐づくものだと理解しています。

土台となる「感情マネジメント」

少し違った視点では、


自分のモチベーションを高く維持し、継続的に、高品質なバリューを出せる状態を作り出せること


これも意図的に取り組んでいた課題です。
24時間、7日間、1ヶ月、プロジェクト全期間、とそれぞれのターム内でのセルフ・コントロールには、非常に気を遣っています。
きまった定石はあってないようなもの。自分にFitする型を、経験則的に見つけ出すしかありません。


実践していることも、山ほどあります。習慣化しているので、明確に意識しないものも増えています。
例えば、「睡眠の取り方」ひとつとっても、
・睡眠前の儀式的なもの(中長期の目標を踏まえ、翌日のパフォーマンスを最大化するために必要なこと)
・睡眠をとるタイミング(ベットに入る時間、コア・タイム、起床の時間)
・睡眠時間(1週間のパフォーマンスを最大化するために必要な時間)
・起きた後の儀式的なもの(朝一番で脳みそをフル回転させるために必要なこと)
これだけ考えることがあります。
「土日の過ごし方」も重要です。主に、リフレッシュの方法・タイミングと、翌週の仕事に向けた準備について、試行錯誤しています。
リフレッシュ方法は、映画を見る、お香を焚く、音楽を聞く、マンガを読む、外に出る、買い物をする、美味い飯&酒などなど、いろいろあります。
ちなみに、最近は、ルルドのマッサージ・クッションにハマっています。これは非常に効果的で、社内中にオススメしています。

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アップワードやペイ・フォワードを通じて、自己認識を深める

閑話休題。
課題感について、手っ取り早く、自分のことを知るために、2つの方法論があります。


1.アップワード:上司へのフィードバック
反面教師、という言葉のとおり、上司の振り見て、我が振り直す。
それだけでなく、上司の凄いところを探して、何をどのように考えて、その域に達しているのか?を観察して、考え続け、本人に聞いてしまう。
時に、行動様式を真似て、成り切ることも有効です。


2.ペイ・フォワード:部下へのフィードバック&指導
先生をやると理解が深まる、というのは真で、指導を通じて、自分の経験を言語化し、昇華することができ、新たな課題を見つけるのに役に立ちます。
また、部下に対するフィードバックは、自分の視野・視座を広げてくれます。
その人の将来まで見据えて、行動に変化が起きるレベルの気づきを与えてあげる。
そのためには、日頃から様々な視座を意識して、部下を観察していなければなりません。
自分の経験則から、持っている視座だけを頼りに、フィードバックしては、部下の心に響きません。


そして、この「アップワード」と「ペイ・フォワード」を、ただやるだけでなく、もう1回転、自分に戻して内省することが重要です。


言語化した「アップワード」と「ペイ・フォワード」を再構成し、自分へのフィードバックに転化する。


ここまでできて、初めて意味がある行いです。

「言語」優位の思考から「直感」優位の思考へ

では、こうしたアップワード/ペイ・フォワードを通じて、いま僕自身が強烈に感じていること。


自分は、非常に「言語」優位でモノごとを考えていること。
そして、論点や仮説を、正確に、一言一句、言語化すること、を重要視している。
そのため、重要な論点や仮説を、反応良く考え、素早く言語化するスキルを劣後している。


という事実。
一方で、今回のプロジェクトを通じて、これまでの自分の方法以外の方法でも、十二分にバリューが出せることを、見せつけられました。
もちろん、120%同意はできない部分も多いですが、自分は、もう少し「直感」優位の思考をしても良いのではないか。
これが新しい発見でした。


そもそも、人間って、言葉で考えるのか?直感で考えるのか?


頭の出来の悪い僕は、物心ついた頃から、どうしたら頭が良くなれるのか?を考えてきました。
とすると、頭が良くなる⇒どうやって人間は物事を考えているのか?、自然とこの問いが浮かんでます。
脳科学や言語哲学にもハマったのも、この問いからです。
結論から言うと、両方、なのですが、コンサル1年目の強烈な原体験から、僕は「言葉」の大切さを意識するようになり、いまの思考法に至っています。


課題感で述べた2つのことも、言語ベースで行うことが多いです。
実は、この「言語」優位の思考法から、「直感」優位の思考法へ、脱皮することが、壁を超えるヒントになるのではないか、と考えています。


全部を「直感だけ」で進めることはできません。
染み付いた言語優位の思考法をベースに、少しだけ、直感の要素を加えてあげるイメージです。


ある人は、僕が、ロジックを発想する際の思考の飛躍に悩んでいるときに、「脱力だよ」とアドバイスをくれました。
当時は、よく理解できませんでしたが、ずっと頭に引っかかっていた言葉です。
この「脱力」を、僕の中では、「直感」と理解した上で、今回の経験を通じて、やっと腹落ちした。そんなところです。

中村俊輔「察知力」

最後に、この本をオススメして、締めとしたいと思います。
僕のバイブルです。


察知力 (幻冬舎新書)

察知力 (幻冬舎新書)


サッカー日本代表、中村俊輔選手が、自分の成長を支えた「サッカー・ノート」について書いています。
彼の哲学は、僕のこのエントリーにも通じることが多く、時々読み返しては、気を引き締めるために使っています。
読み返すたびに、新しい言葉が頭に引っかかり、僕のモチベーションを高めてくれる良書です。


「危機を察知して準備を怠らないことが重要だ」という点ばかりが強調されますが、
自己成長に対する貪欲な態度や、課題設定を言語化することの重要性、感情マネジメント、などを学べると思います。

  • 満足すると痛い目にあう
  • 自分の思い通りに事が進まないなら、その原因を察知して、解決の糸口を見つけ出せばいい
  • 自主練習も、ただやるだけじゃなくて、テーマを設定して・・・(中略)・・・努力というよりも、そうやってテーマを作ってやったほうが楽しいから。
  • 壁がないとイヤなんだ。普通にただ単純にサッカーをやっているのは、落ち着かない。常に負われているくらいが、僕にとってはちょうどいい。
  • 細かいことを感じるか、感じないかで、成長が違ってくる。
  • 「書く」ことが、いかに大切な事かを教えてくれたサッカーノート
  • 壁に当たったときこそ、過去のサッカーノートを開く
  • 苦しい時こそ、やらなくちゃいけない。
  • 壁があるときは、まだましだ。それを乗り越えればいいだけ
  • 環境変化の中で、いちばん大事なのは「自分を知る」こと
  • 監督に不満を抱くのではなく、自分に何が足りないかを察知する
  • 心に秘めた思いは、行動や言葉で表現しないと、伝わらないことがある。(中略)・・・「意識し、行動を変えること」は、プレーを進化させる上で重要なこと

(中村俊輔「察知力」より)


愚直なまでの、成長に対する貪欲な態度。


僕の尊敬するコンサルタントにも、同じような哲学や行動様式があります。
最初に読んだときには、プロフェッショナルには、やはり、共通した部分が多いのだと感じた1冊でした。
このブログにも、「分解能の話」、「解像度の話」や「struggleすることへの充実感」など、似たエントリーがあります。こちらもご参考までに。


以上、長くなりましたが、
未来の自分が、これを読みなおして、「直感」優位の思考法への手応えを掴んでいる日を心待ちに、この記事を終えます。