ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

変化に対応できる人と、変化に対応できる組織

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だいたい社内に2-3人タバコ仲間がいて、仕事によっては毎日一緒にタバコを吸いに行きながら、色々な雑談をします。時に仕事の有益な情報を交換し、時に自分が煮詰まっていることのアイディアをもらったり。ほとんど仕事の話をしていることが多い。PJTベースで動いていると、嫌でも毎日一緒にいるので、話のネタが尽きるくらいです。
1ヶ月くらい前のこの日も、いつも行くYさんとタバコに行きながら仕事に関する雑談をしていました。
その時に、彼との話が面白かったので、今回のエントリーで紹介したいと思います。



Yさん「今日さぁ、○○のところの組織変更と人事異動について関係者に説明したんだけど」
おれ「はいはい、あの件ですね。揉めたんですか?」
Yさん「揉めたほどじゃないんだけど」
Yさん「とある部下がさ、すげー勢いで「ころころ組織変更されて困る!」と、文句を言ってきたんだよね。」
おれ「まじかー、苦笑。大変ですね。というか、普通の会社で、人事異動に文句言うとか左遷ものですねw」
おれ「それを言えちゃう会社の空気もそれまた、らしいっちゃ、らしいですが。笑」
おれ「結局、どう答えたんですか?」
Yさん「もう俺も呆れちゃってさー。もう発想がジュニアというか、わかってねーというか。」
おれ「そういう場で、その発言をすること自体のリスク(自分の評価にキズが付くこと)すらわかってないのは滑稽ですね。何がやりたいのか、発言の意図が、全然わからん。」
Yさん「そうそう。2歩先のこと全然考えてねーんだわ。そういう人は目の前のことだけなんだよね。」
Yさん「でさ、仕方ないからこういう話をしてあげたら、周りにいるやつらにも結構刺さったんよ。」

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でもやっぱり、社長の仕事は、決めること。

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前回の記事「社長の仕事は、「会社を理解すること」」と書いたばかりで、逆のことを言うようですが、もう少し意味合いを解きほぐして別視点から記事を書きたいと思います。


経営者の本音の悩みを聞く機会というのは、そうそうありませんが、彼らも僕らと同じようなレベルで不安や悩みを抱えています。
「論理的に考えれば、これはやるべきなんだけど・・・」
「やると決めないと、物事が何も進まないことをわかっているけど・・・」


この言葉にならない「・・・」に苦悩が詰まっています。
こんなことを本当にやっていいのか?
やったときのダメージはどんくらいか?
リスクの見積もりに漏れがないか?
これをやるとあれを失うが大丈夫か?
不満をもつ人にはどう対処しようか?


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社長の仕事は、「会社を理解すること」

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photo by Cayusa

少し間が空きましたが、第四部です。今回は経営者の仕事について、色々考察を書いていきたいと思います。
第一部「良い会社づくりとリーダーシップ」
第二部「組織設計について」
第三部「リーダーについての戯言。」
マネジメントと日々議論するために、さまざまな分析を走らせ、これまでに三段腹、アツい議論を交わしました。
本気で会社の生き死にに頭を悩ます経営者の熱量と対峙できる機会は、そうそうありません。非常に濃密な時間を過ごしています。
その中で感じられるのは、経営を担う役員間での『器』の差です。『器』といっても、いろいろあると思いますが、「我」を微塵も感じさせない、会社の経営責任を負う一個人としての視野の高さ/広さ、懐の深さを指します。
別に、器の差の善し悪しは特に論じたいわけではありません。
僕の問題意識としては、この器ってのは、なかなか一朝一夕で大きくできるものではないぞ、って当たり前のことなのですが、会社のマネジメント層にそれが求められたときには、真剣に向き合わねば、さすがにいつか会社が潰れるぞとマジになるわけです。
折しも、この記事を書き上げる数週間の間に、「mixi赤字転落」⇒「DeNA組織再編」⇒「GREE希望退職実施」と、立て続けに大手企業のニュースが流れ、業界内の慌ただしさが世間に周知されることになりました。こういう時こそ、社長の胆力が試される時です。
PRESIDENTの記事:役員に「昇りつめる人」の小さな共通点【2】に、こんなことが書いてありました。

人間力■小手先の政治力より、辛酸を乗り越えた強さで勝負できるか
人間の器が「仕事力」も重要だが、トップになる人の資質の根本は「人間力」につきる。どんな苦労でも心の糧にできるかどうかで人間の器の大きさは決まる。
「限界状態を若い頃に1度は経験している。それも数年の時間軸で。そうでなければトップに立てても部下に優しくなれません」
逆境を乗り越える力は、最終的に「胆力」であり、精神的体力である。
「逆境を逆にチャンスと見なす柔軟性と、どん底から這い上がる強さがある」
「危機に直面したときに人間の本質が出る。知性だけでなく危機をバネにして改革できる『腹の力』が備わっています」
こうした「人間の器」の大きさは、生まれつき決まっているわけではない。
人生の辛酸を嘗め、それを乗り越えてこそ大きくなるのである。

役員に「昇りつめる人」の小さな共通点【2】:PRESIDENT Online - プレジデント

この連載が良くも悪くも面白いので、たまに読み返しているのですが、人間の厚みや胆力は、辛酸を乗り越えた結果として大きくなるものだそうです。(役員は米粒ひとつまで綺麗に食べる、とドヤ顔で書いている連載なので、その程度の浅い話だと思ってもらえば十分ですが。笑)
今回のエントリーでは、この曖昧な「器」ってものに対して、僕なりの考察を書いてみます。



『器』がよくわかるのは、限られた情報・限られた時間の中で、意思決定に至る過程において、思考プロセスが垣間見える瞬間です。
卑近な例で言えば、資料を説明されて意思決定を問われたときに、「いま見て決めろと言われても難しい」と逃げる態度を取るのは、小さいですね、と。また、十分な思考や議論がないまま「エイヤッ」で決められても、それは単なるスキル不足ですね、と。資料に細かな突っ込みを入れ始めたら、資料のクオリティが低いのか、往々にして、それも意思決定者のスキル不足ですね、と。
「器」の大きさはなかなか見えにくいものですが、小ささは些細な発言や態度で透けて見えてきます。
逆に、部下の不始末や、会社としての決断を部下に言い渡さなければいけない嫌な役回りを遂行する際には、「器」の大きさが際立って良く見えます。当然、実行の前段では、自分も意思決定の当事者として頭を悩ましていることも往々にあります。


(自分で例を書いておいてなんですが、わかりにくいかな。。。)


意思決定の会議体で、長となる人たちの様子を見ていると、「器」云々というよりも、「意思決定のスキル」や「長としての周囲への見せ方の巧さ/拙さ」のように見える部分も多くあります。
ただ、そのスキルや巧拙を支える胆力は紛れもなく見え隠れしています。逆に言えば、支える器の方がしっかりしていないと、スキルも上滑ってしまうからです。
こうして観察する立場なので気楽なのですが、少し想像力を働かせると、「意思決定の場は、一身に注目を集めながら、自分の思考プロセスを開陳しつつ、そこにリーズナブルさ、フェアさ、真摯さを求められる、とても厳しい場所だなぁ」と常々思います。
決定を迫られつつ、信頼関係も同時に構築しなければいけない、そんな場です。取締役以上であれば、社外取締役のお眼鏡にかなう振る舞いや対応が求められます。

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リーダーについての戯言。

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おそらく、順調に壁にぶつかって、順調に悩んでいるのだと思いますが、島耕作の悩みがちょっとずつ実体験としてわかるようになってきました。
世の中のお父さん大変ですね。
うちの実家が自営業なので、こういう悩みを垣間見たり、想像すらできない世界のなかで育ったものだから、
よく子供のころは「サラリーマンって日中何してんの?」と両親に質問していたのを思い出します。
まぁ自分のことをサラリーマンだとはこれっぽっちも思っていませんが、客観的に見れば、それ以外の何物でもない訳で。唯一、都心に住んで、満員電車で通勤していないことだけが典型的なサラリーマン像との違いかなと思います。
休日は、ゴルフして、自分でコーヒー入れて、映画見て、マンガや本を読んで、マッサージ行って、ビールと2杯目のウィスキーを晩酌で楽しんで。。。
どちらかというとオッサン趣味の独身貴族なんでしょう。
体鍛えよう。


さて。思いのほか連作になりましたが、第三部です。
第一部「良い会社づくりとリーダーシップ」
第二部「組織設計について」
第一部で紹介した、いくつかのフレーズについて、実体験を交えて言語化しておきたいと思います。
意図的に散文になりましたので、意味不明な部分もあるでしょうが、自由に解釈ください。

組織やリーダーについては、ようやく思考の基礎が出来上がりつつあり、
 「”長の器”が組織の上限を規定する。組織の人数が100人と1,000人と10,000人と、求められる器量が全く違う次元にある」
 「人を育てられないマネジメントは失格」
 「信頼される/味方がいる、ってのは最低要件」
 「ストレスなく活躍できる場を提供できる」
 「抜群の問題解決能力は必須」
 「陣地争いに負けないだけの手腕が必要。できれば領土拡大も」
 「カルチャー大事。その組織だけでなく全社への貢献も含めて」
 「武器になるレベルの射程距離/間合いの遠さ。影響力の。」
 「採用、採用、採用」
 「最小限のコミュニケーションで、最大限のアウトプットコントロール」
などなど。巷の本のどこかに必ず書いてあることですが、原体験を伴う腹落ちのもとで、さらにビジネスマンとしてのレベルがアップしてきていることを感じます。
折角なので、次の記事で、1つずつ、自分の言葉で思ったこと/考えたことなどをつらつら書いておきたいと思います。(つづく……)

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組織設計について

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前回の記事からの続きです。
ちょっと小難しい話が続きますが、恒例の脳みそダウンロードなのでお付き合いください。
今日は、こんな話…


組織設計のPJTは、難易度が高い。
陣頭指揮を執るマネジメントでさえもステークホルダーであることが多く、人の顔を思い浮かべがちになるからで、さまざまな思惑が働いてしまう、というのが一番の理由のように思います。
また、本当に意味のある組織を作ろうとする場合、「どの変数を固定するか」のポイントによって、アプローチが変わってくるのでなかなか定型化しずらいものであることも複雑性を高める要因になります。
通常は、大規模な組織再編を機に、

  1. 事業部制やマトリックス組織などの組織の根本構造を変える
  2. 人のアロケーションをドラスティックに変更する
  3. 部長職のポストを絞る/増やす(つまりは昇格/降格人事が発生する)
  4. 子会社化/子会社吸収のオプションを検討する
  5. 事業⇔管理のパワーバランスをいじる
  6. 決裁権限の委譲/集権を進める
  7. 意思決定フロー・プロセスの見直し

などなど、様々な派生イシューを解きほぐしてゆく必要があります。これが変数です。


仮に、1つ1つのやる・やらを全て検討した場合、出来上がるのは、ある種の「組織の理想形」です。理想形を突き詰めて検討し、解に落とし込むだけでも、もの凄く大変な作業です。
しかしながら、実行に移される再編プランは、この理想形とは異なる場合が往々にしてあります。
限られた期間ですべてを一気に変えるにはリスクを伴うので、最終的な落としどころは、段階的な再編オプションとして、メッセージをシンプルに。レバレッジポイントのみの再編に留めることが多いように思います。
組織再編を実際に進めるタスクフォースと再編後の混乱や創造をハンドリングする現場のミドルマネジメントの力量に依存するからです。
「強い中間管理職の数が、組織を決める」と言っても過言ではありません。
実は、「優秀な中間管理職が、どの領域にどれだけいるのか?」「それを踏まえて、どこまで再編を推し進めるか?」という見極めが一番難しく、PJTの佳境を乗り越えた終盤期になって、ようやく深く理解し合意し合える落としどころを決められるものです。
強いミドルマネジメントが十分に育っていなければ、頑張って徹夜で検討したプランも絵餅になりかねません。
理想的なベストな解が、いまの会社にとっての最善手とは限らないわけです。
人によっては、「妥協」のように見えるかもしれませんが、理想形を追求して描き切ったからこそ、何を削り、何を譲らないのか、を明確にすることができるので、「削ることも含めて、この会社にとってのベストな解」と考えることもできるのではないでしょうか。
やらないことを決めるのが戦略。
とはよく言ったもので、組織についても同じことが言えるのです。


さて。組織設計する際には、腹の底から理解しておくべきポイントがあるので、その辺もまとめておきたいと思います。

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