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ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

サッカー観戦のポイント、そして日本代表

diary

yo4ma32010-07-01
W杯のドイツvsイングランド戦を見ながら、Twitterで呟いていたことを、大幅に加筆し、エントリーに書き下ろします。結果はご存知の通り、ドイツの圧勝だったのですが、内容はそこまで面白みのあるものではありませんでした。むしろ、イタリアvsスロバキアの方が、試合終了にかけての加速感や、選手交代による戦術の攻防に見所があったと評価しています。


そんな僕がサッカー観戦のときに見ているポイントは、選手個々人の「読み」、です。


守り側は、「いかに、パスの先/貰い手の動きを読み、ボールを奪えるか」
攻め側は、「いかに、その裏をかく/読まれても通る、パスを送れるか」
で、巧さを評価しています。


ベースとなったのは高校までのサッカー経験です。センターバックやボランチをやっていたので、大抵、相手のエース級のフォワード(中心選手)とマッチアップする試合が多くありました。中学、高校では、1年生でも3年生を相手にしなければいけません。成長期の頃の3年間の差は、非常に大きく、身長ばかりか筋肉量もケタが違うので、死ぬ気でぶつからないと勝負になりませんでした。体格で負けているならスピードで勝負、というのが常套手段ですが、残念ならが、足も速くなかった・・・。
致命的です。


そんな中で、死に物狂いで身につけていったのが「読み」です。「読み」で勝負して、1歩でも早くボールに触らなければ、彼らに勝てなかったのです。また、ゴールキーパーも少しやったことがあったので、「ゴール視点」で怖いプレーやゾーンも感覚的にわかっていたのが救いでした。先読みした「危機察知能力」には、米粒程度の自信があります。

守備と攻撃の評価

まず、僕はこのような経験をベースに、DF目線で試合を観戦しています


守備では、僕の読みと、選手の動き(読み)を照らし合わせて、巧い下手を評価しています。
具体的には、DF目線で見ているからこそ、DF選手のちょっとした動き、目線の配り方などから、「どう読んでいるのか」が瞬間的にわかります。一方で、僕の頭の中では、自分がその選手だったらどう動くか、同時並行でシミュレーションしています。しかも、ワンプレーに関わる選手は、1人だけではありません。ボールと逆サイドの選手、カバーの選手など、少なくとも3〜4人が連動して動いています。彼らの動きまで、一緒にシミュレートしています。


一方、攻撃では、DFの「読み」を欺くようなプレーを評価します。
上記のような「読み」を以ってしても、防げない動きやパスをされたときには、何気ないワンプレーでも、「参った」と唸っています。例えば、パスカットしたくても足が出せないコースのパス、貰った瞬間を狙って潰しにいくが交わされる、など。
正直、スタープレーヤーの個人技任せのドリブルには、あまり興味がありません。巧いかもしれないけど、僕はその巧さを評価できるだけの技量を持っていないので、見ていても面白くないのです。抜いた/抜けなかったの、単なる事実にしか見えません

試合の見所

これまで、僕がどんな視点で試合を見て、どう評価しているか、について概要を述べてきました。もう少し詳細を説明します。

サッカーとは、圧倒的に、DF有利なスポーツです。(だから他のスポーツのようにスコアが大きくならない)
攻防のバランスが防に傾いている中で、ゴールを脅かされる/脅かすプレーは2種類しかありません
「1.完全な個人技での突破」「2.守り側の誰かがサボった」のいづれかです。


「1.完全な個人技での突破」については、ドリブルでの突破シーンを想定します。
ドリブルは、DF側の超人的な身体能力と読みを以ってすれば、DFの勝率が8割くらいでしょう。DFが足を出す/体を寄せるといった邪魔さえしてしまえば、FWは個人技を発揮するのは困難だからです。とはいえ、トップレベルの選手では、2,3歩フリーで走ってしまえば、あとは切り返しやターン、フェイントで抜き去ることは、容易です。
したがって、ドリブル突破の勝負自体に、駆け引きの要素、つまりは面白みがある訳ではなく、実は、ドリブル突破を仕掛ける前と、この2,3歩の間に駆け引きがあるのです。そこを洞察することが、観戦時のポイント、ひいては、サッカー観戦の面白さとなります。


DFは、いかに、試合終了まで集中力を切らさず、相手選手がトップスピードになる前に潰せるか?
逆に、FWは、いかに、DFの死角や虚を突くことで、ボールを受けた後の、2,3歩の空間を作り出すか?
ということが、見所となります。


「2.守り側の誰かがサボった」については、パスでの突破シーンを想定します。
”サボる”というのは、いくつか種類があって、敵を見ずにボールを追ってしまうためにマークを外す、チェックを怠り寄せが遅くなる、全力で戻らずにフリーの選手ができてしまう、等があります。大抵の場合、DFがサボってもボールが来ないので、誰にも気づかれないし、本人は反省もしません。だから、みんな少しずつサボるようになって、「まぁ戻らなくても、マーク相手を見て確認しなくても、大丈夫だろ」と高をくくっています。すると、10回に1回くらい、そこを突かれて失点する。突く形にまで持っていった、攻め側も褒めるべきですし、サボった守り側は小一時間問い詰められても、文句はいえません。
DFは、そこをサボらず、きっちり潰す。パスカットに繋がらなくとも、出先を潰すことに価値があります。地味な動きだけど、僕は一番評価するプレーです。同様に、FW・MFの3人目のプレーヤーがDFの死角に動いたり、フリーのスペースを作る動きは、パスが通らずとも評価しています。


したがって、
DFは、ボールが来ず、結果、徒労に終わろうとも、いかに、試合終了まで敵のチェックをサボらないか?
逆に、FWは、いかに、DFのサボりを見逃さずに、マークを外し、外した相手にパスを繋ぐことができるか?
ということが、見所となります。


ドイツvsイングランド戦でも、例えばドイツ3点目のシーンでは、イングランドの守備の方が人数が2倍いるにも関わらず、誰も後ろを見ずに、ミューラーがフリーになってしまい、シュートされてしました。ここで責められるべきは、センターの2人です。マークすべき左サイドのDFは、右サイドを突破されてしまい、いち早く危機を察知して、ダッシュで右サイドのフォローに向かっています。そこでマークが外れるミューラーをフォローすべきセンターの2人は、全く逆サイドをlookしていません。完全にボールを見ているだけです。
結果、パスを出されて、気づいたランパードが懸命にスライディングに駆けつけますが、ミューラーがシュート体制に入るのに十分な時間を与えてしまい、落ち着いて決められています。


ドイツvsイングランド戦

さて、ドイツvsイングランド戦の評価に話を移しましょう。まずは、イングランドの敗因について。TLやBBC実況などでは、「DF
崩壊」の論調が強いようでした。確かに悪い位置でボールを奪われるシーンが多くありました。
しかし、本質的な敗因は、攻めにも見られる「ディシプリンの不在」にあるのではないかと考えています。「ディシプリン」とは、チーム全体に一本槍として共有されるはずの、攻め・守りのコンセプトのことを意味しています。
このディシプリンが共有されていれば、見所のところで書いた通り、

  • DFは、ボールが来ず、結果、徒労に終わろうとも、いかに、試合終了まで敵のチェックをサボらないか?
  • 逆に、FWは、いかに、DFのサボりを見逃さずに、マークを外し、外した相手にパスを繋ぐことができるか?
  • DFは、いかに、試合終了まで集中力を切らさず、相手選手がトップスピードになる前に潰せるか?
  • 逆に、FWは、いかに、DFの死角や虚を突くことで、ボールを受けた後の、2,3歩の空間を作り出すか?


これらのことが、徹底して実行されます。
今回、イングランドのDFには守りのコンセプトとして、唯一、「ボールを奪ってジェラードに渡す」というのが共通意識としてあったように思いますが、それは「奪い方」「守り方」の指針にはならなりません。やり方は問わないので、とにかく奪え、という意識付けになっているように見受けられた。すると、守備が単なる個人プレーになってしまう。横パスの精度も低くなれば、1対1でリスクを冒してパスカットしにもいきません。
イングランドのFWは、語るほどのこともなく、単調な縦パス狙い。というか、ルーニーに預けて、あとは無視、という感じ。あれでは、あまりにかわいそう。 たまに、サイド攻撃や、FWの突破がありましたが、個人技任せでした。本来、イングランドの良さは、中盤とFWがワンタッチでつなぐパス回しにあったはずですが、全く体を成していませんでした。


一方の、ドイツの勝因。彼らの躍動感あるプレーには、1つのディシプリンが共有されていたように思います。守りでは、2人3人が労力を惜しまず、パスを読んでカットする/受けて側を即潰すプレーが多くありました。
攻めても、少人数で一気にカウンターの場面が印象に残りますが、それ以外にも、2列目からの飛び出しや、サイドに広げるプレーも目立ちました。攻めのイメージを共有したプレーヤーが連動している様子が見て取れました。
(もちろん、全てにおいて徹底されていた、というレベルにまで高まっているようには見えませんでしたので、その後の苦戦は想像に難くありませn)


両者の差異は、TV画面をボーっと眺めるだけでも良くわかります。イングランドが攻めるときは、ボール近くの4人以外が皆、止まってボールを見て休んでいる。ドイツも当然休む。一転、ドイツが攻めるときは、1人が緩急をつけてボールを受け、さらに2人〜がスペースを空けたり、次のパスを貰う動きをする。
ただし、ドイツも手放しで絶賛できる内容ではなかったのは確かです。守りは形になっていたので、ボール支配率に対して、ゲームの主導権は握れていましたが、攻めの連動は薄く、得点シーン以外、ほとんど眠いプレーばかりでした。世紀の誤審の後、イングランドが前がかりになって、逆にカウンターがハマっただけという話かもしれません。


というわけで、比較感で見ると、ドイツは素晴らしく、イングランドはf*ckだったということです。そこで、「眠い試合だー」とTwitter上で呟いたのは、イングランド対比で、ドイツはディシプリンを共有できていたものの、「読み」の駆け引き攻防が見られなかったため、全く面白みにかける試合だったということです。

日本vsパラグアイ戦(余談)

この記事を書いている間に、日本戦も終わりました。マスコミの報道や、コメンテーターは口々に、「よくやった!」「感動した!」と満足気な様子です。僕もスポーツバーの大画面で食い入るように試合を見て、確かに、心揺さぶられるものがありました。一致団結している様子が、これほどまでに伝わってくる日本代表は初めて見ました。
同時に、「ベスト4の国」と、「ベスト8以下の国」の間に、大きな壁を痛烈に感じた大会だ、という感想を持っています。(まだ終わっていませんが)


今大会で、岡田監督の集大成とも言える日本のディフェンス・システムは、世界に通用する域にまで高まったのは確かです。その根源は、「誰もサボらない献身的な姿勢」が支えています。カメルーン、オランダ、デンマークの3試合で証明されたように、そのレベルは相当高いところまで来ています。今大会に限って言えば、ベスト4に入るほどの守備力と評価できるでしょう。
しかしながら、パラグアイも同レベルの献身さをもって、最後まで日本戦を戦い切ってきた。こういう相手に勝てなかったのは、紛れもない事実です。感動に浸って、見失ってはいけません。
史上最高といえるほどのチームの完成度を以ってしても、ベスト16なのです。


日本vsパラグアイ戦の開始前に、両チームの戦力を雑談していたのですが、
 日本:攻撃力60、守備力100 (戦力計160)
 パラグアイ:攻撃力65、守備力100 (戦力計165)
というイメージでした。結果、やはり両者、相手の守備力を上回る攻撃力を持たず、決め手に欠く中でのPK戦となりました。


ベスト4の国、例えば、ブラジル、アルゼンチン、スペイン、ドイツあたりは、「攻撃力110」「防御力90」「戦力計200」みたいなチームです。日本は、ある程度まで攻撃を耐えることができるでしょう。しかし、勝つためには、ゴールが必要です。ベスト4の国を倒すレベル、”日本もサッカー強豪国だな”と認知されるレベルには、全盛期の中田英、小野、中村、本田の4人が、毎代表に揃うくらいの「世界に戦える攻撃力」が必須なのです。

 例えば、トップレベルだと今、得点の約40%はフリーキックやコーナーキックなどのセットプレーから生まれます。残り60%のうちの10%は、キーパーのチョンボのような、どうしようもないアクシデントから生まれます。

 そして残り50%のうちどれくらいが普段よく言われたり、練習したりしている「後ろからボールをつないで相手を崩して点を取る」ということなのかというと、世界でも15%くらいです。日本のチームだと10%を切る。では、それ以外はどういう得点なのかというと、相手のボールを奪って速く攻めていくカウンターアタックなんです。

岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは (1/7) - Business Media 誠


岡田監督は、上記の認識の下、ディフェンスシステムを構築しました。同様に、日本のサッカーが次のレベルにステップアップするための攻撃システムを、誰が作り上げるのか、非常に楽しみにしています。

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