ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

理論武装は弱さの証拠

anpan man

小難しい記事が続いたので、軽いやつ。

 

コンサルの癖で、なにかを主張するときに、ついファクトやロジックを組みがちになります。明確な根拠無しに、スタンスをはることに、恐れすら覚えます。

ただ、完璧なんてありませんから、文字や資料に落とすときには、緩い部分と固い部分を、明確に意識して、【負けない】ように脇を固めます。それが正しい作法だと刷り込まれているし、クライアント大企業の信頼を獲得するために最適化された手法だからです。

 

日本だけではありません。海外のエグゼクティブ向けも同じです。

テニヲハ間違うだけ、数字1つ間違えるだけで、会社全体の信頼を失ってしまうので、ジュニアからパートナー、ディレクターまで、【正確さ】や【根拠づけ】には過敏に反応します。

揚げ足とられて、10億円、100億円のディールを失うくらいなら、血眼になってディテールにこだわるのも、無理はありません。

 

 

しかし、世のなかの大半の人には、関係のない話ですよね。

ガチガチの理論武装ばっかりやるつまんない人間と仕事をしていても、エキサイティングで学びにはなれど、楽しいわけがありません。

ロジック組まれた固いメッセージは、理解を促進できるけど、共感を呼び起こすことが難しいです。熱い想いや感情ダダ漏れのメッセージのほうが、共感を呼びます。

 

ぼくも理論武装しているときは、その思考過程すらも知的興奮に満ち溢れ、楽しいと感じてしまうくらいに、仕上がっています。筋道立てて、ロジックが通ったとき、無から有を生み出した快感に浸れるのです。気持ちいいんです。

 

しかし、ときどき思うのです。

 

これって、自分の弱さを隠すためじゃないか?

理論武装して、強くなった気になってないか?

守りたいものは、ちっぽけなプライドか?

アンパンマンは、理屈抜きで人を殴れるだろう?

 

 

そんなアンパンマンの話でした。

 

 

 

人の本音と組織課題

Changing

昨日のつづきだ。

 

ランチや飲み会、休日も一緒に遊ぶほど、社員同士の仲が良い。

部長マネージャーも、すごくフラットで、メンバーから見ても、ヒエラルキーをかざすような偉ぶっている人は皆無だ。

経営陣に対しても、特に明確な敵意や悪意、疑問を持つような関係性もない(これは勘違いかも。自信ない。)

 

ザーベイ結果をもとに、メンバー層の抱えている疑問や不満、その裏側にある根本的な課題について、考察を深めている。

 

人には、言葉にできる疑問不満と、言葉にできない疑問不満がある。言葉にできる問題は、対話や議論を通じて解消してゆけば良い。それだけの話だ。

本当に解決すべき問題は、言葉にできない、なんとなく感じているネガにあると思うんだ。自分の経験に照らしても。

 

特に、『うちって、こういう会社だよね』というイメージが、同僚同士の会話や外の取引先からのフィードバックなどなどで、勝手に固定化されていくところに、恐ろしさを感じる。なんとなく友人に飲み屋で仕事のことをグチったら、友人から何気なく言われたこと、でもポジにもネガにも変化しえる。

だから、人によって、会社イメージが全然違うのがイマだ。あるいは、目に見えない空想で、変な怪物をつくってしまっているのも感じる。変化を引きずって、理解が追いついていないだけかもしれない。

 

 

取引先からの信頼は厚い。ユーザーやお客さまからの反応も良い。となると、メンバー同士の認知がやっぱり問題で、ポジを増やしていかないといけない。

 

他の会社や世の中のことを知っている人は、自分の状況を相対化できるので、満足度は高い傾向にある。一方で、相対化できない人は、妄想が膨らむ傾向がある。だから、客観的な情報、例えば、競合の業績や裏側の実態を詳らかにしても、みんなには刺さらないだろう。いかに自分たちが凄いか、良い会社なのか、を伝える努力はしないよりはマシだろうけど、本質的ではない。

 

みんなのパーセプション・チェンジが必要なのだ。それも、メンバー同士で非公式にやりとりされる会話のなかで、誇りや承認を感じられるようになることが理想だ。

 

また、単にインナーブランディングがどうの、と言うほど簡単ではない。覚醒した部長マネージャーが、ポジティブなノリや雰囲気で、引っ張っていくことも必要だが、あくまで最後の味付けにすぎない。よく経営陣で議論していても、雰囲気やノリの問題に帰結して、そうした打ち手でカバーしたくなるけど、逆に、臭いものにフタをするだけになってしまうと思っている。

 

どちらかというと、会社に抱くひとりひとりの期待値の方をイジる必要があると思う。

不幸になりたい人はいないはずなのに、自分たちで、負のスパイラルに陥っている人もいる。会社や仕事に誇りを持てないのだ。

 

 

まずは、みんな良いチームにしたいよね、という確認から始める必要を感じている。人によって良いチームに抱く期待、イメージが全然違うだろう。その違いを、お互い確認するところから、地道に一歩ずつ進むしかない。それで音楽性の違いが明らかになって、さらに心が離れていく人も当然出てくるだろう。それでも前を向いて進んで行こうと思っている。

 

 

 

 

 

トヨタ社長のほとばしる熱い想いに感化された話

Thread Bare

 

woven city。

TOYOTAが打ち出したコネクティッドシティ構想。

東富士工場跡地に、実証実験の街をつくるという。

その街のコンセプトが「woven city」。編み込む街。

3本の道を網目のように編み込む街をつくるという。

「機織り」から始まったTOYOTAらしい名前だと思う。

 

 

みなさん、ぜひこの記事を読んで欲しい。

 

jidounten-lab.com

 

豊田章男社長が、年頭挨拶で今後のビジョンや経営にかける想いを忌憚なく語っている。書き起こし文を読むに、今回から、業務命令での参加ではなく、自主参加した社員がこの話を聞いているという。一部、空気を読んで消極的に参加している人もいるとは思うが、この話をトップから直接聞いて、心に火が灯ったひとも多いのではないかと推測する。

 

ぼくが読んでいて驚いたのは、「自分と社員との間に、距離を感じている」ということをトップ自らがさらけ出して、なおかつ、社員にむけて「おれも頑張るから、お前たちももっとこうしてくれ」と態度を改めるよう要望している点だ。

 

すごい勇気だと思う。

創業一族だからこそ言えることなんじゃないかとも思う。

それでもやっぱり、大企業のトップがここまで開けっ広げに社員を挑発するのは、すごい勇気だと思う。

 

 

要約すると、

  • おれは、トヨタを、モビリティ・カンパニーに生まれ変わらせたいんだ。
  • そのために、コネクティッド・シティ構想を掲げて、まず第一歩目のwoven cityを成功させたいんだ。
  • そのために、トップダウンで、現場に降りて率先して背中を見せるから、みんなも、ただ突き上げ型・押しつけ型のボトムアップではなく、トップの考えを汲み取り寄り添うボトムアップをしてこいよ。
  • そこに賛同しない、理解しようとしない態度は、やめてくれ。

と。

 これらを魅力的なビジョンと、熱いパッションでくるんで、がーーーーっと伝えた。

あっぱれ、だ。

トップの立場の人たちは、社員との心の距離、言葉の壁、理解されないもどかしさを感じる場面は、一度や二度ではないだろう。どうしても、本気度も違うし、覚悟や熱量にも差が出てきてしまうから。

 

ぼくも豊田社長のように、志高く、みんなも変わってくれ!と言いたい場面が何度もあった。ただ、そこまで踏み込んで言うだけの実績も自信もなかったから、踏み込めなかったし、単なる経営者の理屈を社員に押し付けるようで、理性のブレーキがかかってしまっていた。「そんなことを言われても、自分が逆の立場だったら刺さらないし、嫌だよなぁ」と。

ところが不思議と、豊田社長の話を読むと、すっとぼくの胸に入ってくる。当事者ではなく、蚊帳の外から眺めているからかもしれないが。

型に落とし込むと、

 

ビジョンを語り、

熱い想いを吐露し、

社員に変化を求め、

最後に、約束をする。

これらを、トップが、全人格的に、人間性をさらけ出して、自分の言葉で語る。

何なら、打算抜きに、話したいから話している。言いたいから言っている。ようにすら見える。素晴らしいと思う。

 

 

孫さんともまた違う。孫さんは、自分の実績と構想、お金の臭いをもっとムンムンに押し出す。これはこれで、可能性を感じさせる魅力的なプレゼンテーションだと思う。

豊田社長は、自分でもいうように「格好悪くてもいい、ありのままをさらけ出す」「ただ自分はトヨタが大好きだ、ならその大好きなトヨタを守りたい」というスタンスだ。スタンフォードの卒業講演なんかよりも、ずっと日本人の心に刺さるメッセージングだったし、これを同じクオリティでできる人が他にいるのかと思う。

 

ぼくは豊田スタイルのほうが好きだ。不器用な感じに共感すら覚える。

 

 

 思い返せば、米国でのリコール問題の際、米国議会の公聴会で豊田社長が見せたパフォーマンスは素晴らしかった。これを契機に、国内外からの豊田社長への評価が上がった。当然、取引先や家族、関係のない社外からも、豊田社長に対する見方が大きくプラスに変化した。社員たちのなかにも、リコール問題への対処は大変だけど、そんなトップの評価を嬉しく、誇らしく思った人もきっと多かっただろう。

この事件以降、豊田社長も、どこか誇らしく、自信溢れる演説が増えてきた気がする。決算説明やカンファレンスの発表を全部見たわけではないが、力強いメッセージを発信する姿をメディアで見かけることも多くなった。

 

 

SONYの電気自動車に続き、TOYOTAのコネクティッド・シティ。

夢溢れる構想で、世界をあっと言わせる事例が増えてきた。

日本のスタートアップは、大企業を嘲笑する暇があったら、彼らのように世界をあっと言わせよう。

ジャック・ドーシーやイーロン・マスクスティーブ・ジョブスに憧れるのも良いが、ぐっと憧れる想いを胸にしまい、世界をあっと言わせる会社に嫉妬心や悔しさを覚え、歯をくいしばって頑張る。

そういう生き様でありたい、と強く思います。

 

 

社員の満足度サーベイ

Happy

業績と各種KPIが伸び悩んだ踊り場を終えて、劇的に成長トレンドを描き始めている。痛みを伴う改革は、一旦、うまく着地したようにみえる。

そこで、定期的に調査している、全社員の満足度サーベイをぶん回した。いま手元に速報データがあがってきたので目を通した。

 

全然、良くなっていない、、、

それどころか、悪化しているチームもある、、、

そんな気持ちで仕事していたのか、、、ごめんよ。

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想定の範囲内ではあったけど、やはり通知表のように項目ごとに点数を突きつけられるとめちゃ凹む。特に、「経営陣への信頼」スコアは見たくない。

 

ぼくひとりの力で改善できると思うほど、過信し自惚れてはいない。一方で、成績表は、すべて自分の責任だなぁと捉えるしかない。

 

良かった点もある。部長とマネージャーの満足度スコアが劇的に改善しているのである。経営陣との対話が増え、合宿での覚醒し、自分たちの手で成果を出したことが大きな自信になってきたのだろう。

 

あとは、現場のメンバーだ。中心となる部長、マネージャーが輝いてこそ、メンバーまで浸透させられる。その土台が整ってきたように思う。

現に、1番スコアの良いチームは、マネージャーの満足度がすこぶる高い。彼ら彼女らがコミュニケーションの起点となり、周囲に良い影響を与えている。

 

社長ひとりでは、何もできないので、ここはみんなに頼るしかない。おらにちからをー。

 

この問題に、真摯に向き合おう。社員が不満を抱えながらがんばる会社を経営していても、なにも誇れない。成果に慢心してはいけない。

 

社員の幸せなくして、クライアントやユーザーが幸せになるはずはない。大変だけど、これをやり切らずして、ビジョンもへったくれもない、と心から思う。

 

 

 

 

 

経営合宿でのチームビルディング

Camp fire (b&w)



先日、1年半ぶりの経営合宿を行ってきました。どんなことを議論してきたのかを、メモを兼ねて書き残しておきます。

 

 

2019年は、すったもんだ色々なことがありました。事業は成長しつつも、内部変革を進めた大変な時期でした。

一言で言えば、苦難の再生期、と認識しています。

 

振り返ると、とにかく目の前のクライアントの皆さまや、ユーザー、お客さまに価値のあるサービスを提供すべく、1人1人がサービスのクオリティ向上と、信頼関係の構築に専念し続けてくれました。

組織の大変革前後のネガティブな空気を跳ね除けて、見違えるように風通しの良い、連帯感のあるチームが増えてきて、本当に嬉しく思っています。

ぼく個人としても、これでダメなら諦めがつく、くらいにまで考え切り、先陣を切って泥臭く改革に手を入れたので、いまこの瞬間は、やり切った感を覚えています。

 

一方で、再編時に、約8割の部長、マネージャーを新任で抜擢しました。

当時は、この改革を前向きに押し進められる布陣だけをしいて、みんなにも、まずはそこに専念してもらってきたので、経営チームとしての一枚岩、信頼関係の構築を劣後してきてしまっていました。

また、短期的な改革と成果を追い求めるあまり、中長期的なチャレンジや取り組みもまた劣後せざるを得ない判断でした。

 

そこで、落ち着いたこの年明けすぐに、泊まりがけの経営合宿を行うことにしました。

アジェンダは大きく4つです。

 

  1. 慌ただしく駆け抜けた1年を、一度立ち止まって冷静に振り返るセッション
  2. この短期間での競争環境の変化と、自分たちの強みを再認識したうえでの今後の方向性、存在意義、提供価値についてのディスカッション
  3. コーチングの手法を転用した、1人1人の価値観をあぶり出すワークショップ
  4. BBQ、サウナ、飲みながら深夜までの1人1人のめっこりとした自己開示エモタイム

 

 

1. 慌ただしく駆け抜けた1年を、一度立ち止まって冷静に振り返るセッション

この1年で、ものすごくたくさんの成果が出ました。それが一時の偶発的なものに過ぎないか?競合と比べて、強い競争力を持った持続的、構造的な成果になっているのか?、を冷静に棚卸します。

普段の経営会議での議論では、人によって楽観すぎ・悲観すぎ、短期目線すぎ、メンバー目線すぎ、など偏った見解になりがちで、議論にならないので、どんな展開になるかハラハラしていました。が、今回は杞憂に終わりました。みんな年末年始でリフレッシュできていたのか、非常にバランス良い議論ができたと思います。

また、良かったことだけでなく、残っている課題や当初到達したかった地点からの差分を反省して、下期に向けたテーマを明確にすることもできました。

 

 

2. この短期間での競争環境の変化と、自分たちの強みを再認識したうえでの今後の方向性、存在意義、提供価値についてのディスカッション

先日の記事にも書いたように、変化の激しいベンチャー界隈で、外部環境を正しく分析することは容易ではありませんし、あまり突き詰めても仕方がない部分はあります。ホントかウソか分からない断片的な情報だけで、脇を甘くしたり、気をつけすぎても意味がないので、今回は、ちゃんと複合的に検証しつつ確からしい重点ポイントに絞って、視座を固定しました。

この半年だけでもみんな苦労しただけあって、自分たちのサービスの本質的な強み(便益と独自性)を再定義することができたと思います。さらにその強みを活かして、未来に向けた方向性も朧げながら見えてきたのも良かったと思います。

 

経営者だけが頭のなかで構想し、みんなに夢を語って踊らせるやり方は時代遅れです。同時に、現場の積み上げだけでも魅力的な構想は出てきません。

未来に向けた話は、すごく扱いが難しいテーマだと思います。

 

実を言うと、過去の経営合宿でも何度もトライしました。その際は、荒唐無稽な夢想か、個人の勘に基づくエゴの域を出ず、いま思えば残念なアウトプットしか出せませんでした。

 

今回は、毎週の事業部経営会議での壁打ち議論を下地にできたので、程よく地に足がつき、個人ではなく会社や事業を主語に、構想するステップを踏めたことが良かったのかなと思います。

 

 


3. コーチングの手法を転用した、1人1人の価値観をあぶり出すワークショップ

これは、あえてゴールを定めずに、とりあえずやってみよう、という感じでやりました。

まず最初に、価値観キーワード50個くらいから、それぞれの大事にする価値観を3個特定します。

つぎにくじ引きで2人1組になり、手元のマニュアルに沿って、精神科医の先生と患者のような形で、自己開示を引き出してゆきます。

その後、1人ずつ、聞き出した内容を他己紹介の形で、全体発表します。

最後に感想コメントを付箋に書いて、集めて、さらにそれも全体に共有して、拍手で終了です。

 

これが素晴らしいワークショップで、特に「他己紹介」で過去のエピソードなどを聞いていると、その人の意外な一面をフラットに聞けて、感動してしまうのです。想像を超えたものでした。

みんな日々の業務や飲み会で知った一部の情報から、お互いに勝手な人物イメージをもっています。

発表を聞いているうちに、それらのイメージがいい感じに丸く、良い方向に統合認知されていく感覚を持ちました。

最後のフィードバックも、相互承認(アグノリッジメント)を得られて良いものでした。

 


4. BBQ、サウナ、飲みながら深夜までの1人1人のめっこりとした自己開示エモタイム

肉は旨く、満月の露天風呂も素晴らしく、焚火でエモエモして、テラハ風のコテージで、15名ほどが車座になって、3番の発表の続きをしました。

サウナand外気浴で完璧に整ってしまったぼくは、その後、酔いがまわりすぎて、ずっとゲロゲロしてました。

 

最後は記憶が朧げです。

ただ、ずーっと1日中、顔を合わせて、奥深くまで温かい空気で話し合えたので、これまでにない結束力を強く感じたのを覚えています。

 

虚勢や強がり無しに、掛け値なく、

これは、もっといい経営チームになるな。

もっともっと攻めていけるな。

このチームで成功したいな。

と確信できた合宿でした。