ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

バリューベースで働く意味

yo4ma32012-03-12
この頃、立て続けにジュニアメンバーと一緒に仕事をする機会があり、いろいろ思うところがありました。
新卒、中途のどちらの方でも、入社半年程度もすれば、だいたいongoingな人と、苦労している人がわかってきます。
これまで数多くの人を見てきましたが、ongoingな人に共通する特徴は、「自分の課題を正しく認識し、解決の方法を自力で編み出すことができること」かと思います。もちろん、偶然も必要です。
目いっぱいストレッチしてくれるような優しく厳しい上司に恵まれ、死にもの狂いで諦めずにPDCAを回し続けた結果、どんどん階段を上ってゆくことができます。その過程で、『正しい知恵』を身に着けています。
一方で、苦労している人の特徴は、逆です。「自分の課題を正しく認識できず、解決の方法も自力で編み出すことができない」のです。そもそも課題認識が違うので、もの凄く頑張って努力しても、徒労に終わることも多くあります。頑張った成果として、自分の進歩が実感できないので、2倍苦しい状況になります。こうした人は、死にもの狂いでPDCAを回すのですが、結果として、『浅はかな知識』が身に付くだけのケースが多いようです。


なぜこの差がついてしまうのでしょうか。
コンサルティング・ファームの中で、とんとん拍子に出世できるような人はごく一部です。大半の人は、多かれ少なかれ、前述のongoingな人と、苦労する人の中間にいる状態です。特に、最初の半年なんて、全然わからんものです。優秀だと前評判の高かった人材が、生真面目で愚直な人材に抜かれてゆくこともしばしばあります。


どうも、1年、2年経過したときに、大きな差となって現れる“きっかけ”のようなものが、最初の6ヶ月の間にあるのではないかと思っています。
この件について、信頼できる上司と、よく飲み屋で議論をするのですが、僕の結論はほぼいつも一緒です。


『バリューベースで働く意味を問い続け、自分なりの答えを見出すことができたか』


ここに尽きると思います。
端的に言えば、「バリューって何?」と聞かれて、自分なりにバシッと答えられるかどうか。


その意味では、新卒は楽なんでしょうね。真っ白なキャンパスに、「お前バリュー出てないよ!」って言い続ければ、盲目的に「バリュー出そう!」って刷り込まれてしまうのですから。「自分がバリューで評価される」って嫌でもわかるので、「じゃぁ、バリューってなんだ?」と自然に悩むケースが多いように思います。
中途の人は、本当にいろいろなパターンがあります。ただ、一番苦労している方をよくよく見ていると、この「バリュー出そう!」とか「バリューって何だ?」って健全な問いを立てられないケースが多いのではないでしょうか。


いま思えば、入社後、初PJの1日目に、


『タクシーはバリュー出てからにしよっか!』


と言われたこと。衝撃が走りました。どれだけ睡眠不足で辛くても、足を引きずりながら満員電車に揺られていました。
みんながタクシーで颯爽と帰る中、ひとり足早に駅に向かうときに、ちょっと涙が出そうだったのは秘密です。
これが僕のこの4年間のすべての始まりでした。


翻って、いまのジュニアメンバーに、同じ衝撃を与えることができているのかどうか、反省しています。
人間関係の中で、相手の意識や行動に変革を起こすレベルは、対クライアントならまだしも、インターナルとなると意外と難しいものです。
それでも、上手く、その人の個性に合った“気づき”を与えてあげられるようなやり方がないものか、模索しています。

まとめ

バリューベースで働けない人は、プロフェッショナルとしては残念ながら失格です。
【士業】として頂いている時間あたりのフィーは、ジュニアですら10〜30万円/day、コンサル・マネで30〜50万円/dayもあります。やらされ仕事でExcelやPPT作ったレベルでは、到底、その価値を認められない水準です。
外形的にはこうした数字を自覚しながら、同時に、クライアントのマネジメント層の意思決定の重さを、どれだけ肉薄感を持って想像し、その責任感の元で意思決定をサポートできるかどうか。
ここに尽きるのだと思います。


仮に、最初の6ヶ月の間に、その後を決定づけるような“きっかけ”があるのだとしたら、この「バリューベースで働く意味」を悩むことができたかどうか、が鍵なんだろうと推察します。
今後のファームの競争力を維持してゆくためにも、最初の6ヶ月に意図的に”気づき”を与えるコミュニケーションの必要性を、ファーム全体の共通認識として持つことが大切なんだろうな、とちょっと危機感を持っています。



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