ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

ロジカルに話しても、人は話を聞かない

yo4ma32010-07-18

普段のコンサルティング・ワークの中では、当面のメルクマールとして、インターナルmtgやクライアントmtgを設定し、仕事を進めることが基本です。
自分の担当領域については、基本的にすべてオーナーシップを持って、mtgまでにoutputを完成させてゆくのは当然のこと、自分で考え作ったものなので、現場レベルのmtgであれば、新卒1年目でも、自分でプレゼン(説明)をする機会が与えられます。
また、ある程度慣れてこれば、年次に関係なく、クライアントの部長/取締役/専務向けでも、説明を任されることがあります。(社長となると話は別かな)
かく言う自分も、クライアントに恵まれたこともあり、1年目の終わりには、部長さん相手にmtgをこなしていました。


とは言え、いつも同席しているマネージャーやアソシエイトの方に、サポート頂く場面も多々あり、
完全に1人で会議を回すレベルには、もう半歩、というところです。
彼らがフォロー発言した場面では、その後のクライアントの返答を含め、すべての発言メモに取り、
あとで、「なぜ、マネージャーは、自分と違う言い方をしたのか?」「なぜ、クライアントは、あのような反応を示したのか?」などを
振り返り、自分の至らない所を認識し、改善に向けて試行錯誤しています。
基本ですね。
そんな反省や試行錯誤を繰り返す中で、近頃、切に感じることを1つ。


ロジカルに話しても、人は話を聞かない。


ということ。
「ロジカルだけじゃダメなんだ。その人の感情に訴えなければ」と、よく言われますが、それとは違います。
詳しく説明すると、


人は、他人の言葉を「そのまま」理解することが苦手。
自分の言葉・解釈に置き換えて、理解しようとしがち。
よって、あるメッセージを理解してもらうためには、エッセンスだけの簡潔な表現に加えて、
適度に冗長な話をしてあげる必要がある。
(理解する時間を確保することが必要)


ということ。

よくいる人

普段、mtgの場で、誰かの発言を聞いて、「仰っているのは、こうこうこういうことですね」と、自分の言葉に換言している人は要注意だと思います。
本当に背景まで理解しているのならば、換言する意味はありません。単なる内容確認だけでmtgの時間を使うのは勿体無いです。
(当の本人が、自分の発言を十二分に理解していない場合には、話を整理してあげる意味はあると思います)
換言しながら、「ということは、XXXということになるね」と議論を進める発言までできて、初めて意味があることです。


相手が、部長、本部長、取締役クラスだったら、まず換言しないでしょう?
発言者の表現していない真意まで汲みとって、バリューある発言で返すはずです。
本来、議論はそうあるべきだと思います。


相手の言葉を、その言葉のまま理解する。


コミュニケーションの基本であるはずですが、相当難しいことです。ほとんどの人ができません。
いわんや、「要するに何」を考え続けているコンサルタントは、陥りがちな罠です。

冗長な話が必要なわけ

本来、ロジカル・コミュニケーションの目的は、人と人との解釈の違いを極力最小限に抑え、真意をそのまま理解してもらうことにあります。
それでもなお、冗長な話が必要なのは、普段からの、無駄いっぱいのコミュニケーションに慣れきってしまっているために、エッセンスだけでは、理解が追いつかないと推察しています。というのも、クライアントが大企業になればなるほど、政治的にコミュニケーションの難易度が高い会社であればあるほど、こうした現象が現れるからです。
また、人によって、本当に腹落ちする言葉が違うので、いろんな言葉を使って、少しでも頭に引っかかる言葉を探す必要がある、という解釈もできます。


コンサルタントにも、いろんなタイプの人がいて、

  • エッセンスだけの簡潔な表現を、できるだけ噛み砕いて、平易な言葉で話すパターン
  • 冗長な話に、ちょっとした「へぇ〜」話を加えるパターン
  • 言葉の間に、「え〜」「あ〜」とか「そうすると、言えることは〜」「〜と思われますので」「そういう意味では〜」などの意味のない前置きや繋ぎの言葉をいれて、伝える時間を長くするパターン

などなど、巧みに、クライアントの理解を促す技を使っています。


究極的には、無駄な話がなく、簡潔な表現でありながら、一言一言がクライアントの心に刺さりまくるスーパー・コンサルタントも存在します。そんな”表現者”に1歩でも近づきたいと思いながら、日々、一言一言に魂を込めて発言しています。

ちょっとした変化

上記のようなことに気がついてから、発言の「質」が変化した、と自覚しています。
以前は、声を張りながら、早口でまくし立てるように、がんばって説明している感を全面に出していました。恥ずかしい話ですが、聞いて欲しい!という思いと、自分の頭の回転をそのまま言葉に乗せることが、賢さを示す1つだと思っていたんですね。
内容についても、無駄な言葉が多く、言葉に厚みがありませんでした。
むしろ、無駄な言葉を出来る限り短縮するために、早口にしていた、という順序です。


いまは、意識的に、声のトーンを抑え、スピードを落とし、エッセンス+αの話を落ち着いて話すようにしました。
すると、クライアントの聞く態度が如実に変化します。
僕の発言のタイミングでは、こちらを一斉に向き、一言一言を解釈するように熱心に聞いてくれます。メモを取る人も増えました。


もし、僕が最初からそうしていたらどうでしょう?


それもやはり、聞いてもらえなかったでしょうね。
無論、途中で、その方向性を試しました。すると、ゆっくり話をするものの、時間あたりの情報量が少なくなり、意味のない人になってしまいました。よくあるパターンですね。声を張って、早口でまくし立てるスタイルが1つ確立していたからこそ、無駄な言葉を削ぎ、内容に厚みを持たせることができたのだと思います。

結びに

人は、そこまでロジカルにできていない。


ということは、理解していました。だからこそ、誰にでも理解できるよう、構造化をし、メッセージを伝える基礎は怠っていませんし、言葉選びにも慎重になります。
が、


ロジカルに話しても、人は話を聞かない。


ということに気づくまで、僕の場合、丸2年を要しました。
ちょっとした心の持ちようです。「感情に訴えかける」言葉も不要です。


熱意を込めたエッセンスと、適度な解釈時間。


それがロジカル・コミュニケーションのコツです。