ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

就職活動前に知っておくべきケース面接/グループワークのこと2

yo4ma32008-09-15
さて、第1部では、面接官の視点から「学生に何を求めているのか」について書きました。("こちらの記事"
パート2は、この内容をふまえて「就活中の学生がどうすればいいのか」を述べていきたいと思います。

  • 就活生がGWの場でやるべきこと(本エントリ)
  • 就活生がケース面接の場でやるべきこと(次エントリ)


まずはグループワークについて説明します。ケース面接のお話は次回に。


■注:このエントリの内容は、ファーム公式のものではなく、120%私見です■
ちなみに、新卒の学生さん向けの記事ですが、抽象的な思考態度や行動様式の部分にフォーカスを当てています。
具体的なケース問題の解き方は、自分で練習すればいくらでも上達しますから、他のサイトを当たってくださいね。

就活生がGWの場でやるべきこと

ポイントは、3つです。
地頭鍛える、数かぞえる系のケースを解き慣れるとか、当たり前の準備を全部やった上での話です。
繰り返します。
ケース問題の解き方は、各自、練習してください。必ず上達しますので。
それ以外の、抽象的な思考態度、行動様式についてのポイントです。

  • 自分の得意な役割(ポジション)を知る
  • その場で適切なポジションを取る
  • 人の意見を尊重し、議論に組み込む(自分の考えに取り入れて発展させる)

この3つは、「孫子の兵法」の有名な一節、「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」の視点と同じです。

1.自分の得意な役割(ポジション)を知る

まず、一つ目の自分の得意な役割(ポジション)を知るためには、
CSI(コミュニケーションスタイルインベントリー),DiSC分析の概念と利用方法を理解しましょう。
簡単に説明すると、

DiSC分析とは、
一般的にはコーチングの効果を最大化するためのツールとして有名な、
人間の言動と行動を分析し、タイプ分けを行う「行動特性分析」


そう、あなたの行動特性の分析です。
コーチングの手法が、なぜグループワークに必要かと言うと、この行動特性がそのまま議論の場でのあなたの役割に繋がるからです。


そこで、まずは、自分の行動様式のタイプを知ること。
世の中には、あたなと真逆の考え方、思考態度、行動を取る人がいますが、
どちらのタイプもコンサルティング・ファームからオファーをもらえる人材ということを覚えておきましょう。


簡易診断してくれるサイトをご紹介します。

・Test.jp
http://test.jp/
・コーチング 4つのコミュニケーションタイプ:WEB-LABO
http://www.web-labo.jp/other/typecheck.html


注意して欲しいのは、人間だれしも全てのタイプ(4つのポジション)を兼ね備えているということです。
仕事をしているときに上司・部下・同僚に対して出る側面、プライベートで彼女・奥さん・子供に対して出る側面、一人でいるときに出る側面など、全て異なったポジショニングです。状況に応じて、無意識ながらに器用に出し入れしているものなのです。
簡易診断で出てきた結果は、自分の居心地のよい場所という意味ですので、間違えないようにしてください。


ただ、これをやって、「私、プロモーター♪」「俺、アナライザー!」とか、喜んで終わっていてはいけません。
就職活動という視点で考えたときには、下記の視点からさらに深掘って考えておきたい。

・どのポジションで一番バリューを出せるのか?
・GWの中で、そのポジションのバリューとは、そもそも何か?
・どうやって、そのバリューを発揮させるのか?
・2番目にやりやすいポジションに、自分の中でスイッチを入れ替える方法は?
・そのときのバリューの出し方は?
・3番目はどうか?
・一番苦手なポジションはどうか?

「自分の得意な役割(ポジション)を知る」というのは、ココまでのことを言います。
試行錯誤してみましょう。

2.その場で適切なポジションを取る

2つ目。
「お〜簡単じゃん。ポジション取るだけね。足りないところでしょ?」って思った人。
そんなに甘くないよ。


適切なポジションって何か、というと、パート1「コミュニケーション能力」の部分で書いた、4つのポジションの“足りていない役割”のことを指します。
当然、何が足りないのか?を知るためには、メンバーのGWに対するスタンスを知らねばならなりません。
そして、GWのメンバー全員の得意なポジションを知るために、観察眼を磨かなければならない
ここがグループワークのキモです。


観察眼を磨くコツは、「日常生活から仮説・検証のサイクルを何度も回して、データベースを構築する」以外に方法はありません。
例えば、自分の友人を想像してみてください。
中学時代、クラスの人気者で目立ちたがり屋だった人。頭が切れて参謀タイプの人。いろいろいるはずです。
そして、彼らがどのポジションで、どういった行動特性を持っていたのか、考えてみて欲しい。
例えば、「コントローラーだったら、すぐに人前で足を組み、威圧的な態度を取る」とか。
言葉尻、何気ない仕草、挨拶に対する応答の仕方、会話の端々。すべて一人の人間を理解するためのヒントとなります。
それらを事細かに描写してみましょう。各ポジションでの特異的なパターンがみえてくるはずです。


まずは、自分の周りの人間のタイプを知ること。仮説を立てて、検証してみてください。


そして、本やWeb、観察ベースで、4つのタイプおける代表的な特徴を知っておきましょう。
それぞれのタイプによって、“扱い方”が異なるためです。
例えば、プロモーターに対して、人前で褒めることは非常に効果的ですが、コントローラーに同じことをやっても、何の得にもならない。むしろ、ぶっ殺されて終わり。コントローラーは自分の認める人意外から褒められても、「お前に俺が判断される(褒められる)筋合いねぇ!」とムカつく訳です。あるいは、「なんか裏があるのか」と警戒します。
といった具合に、各タイプごとの取り扱い方法をマスターするようにしましょう。


同時に、タイプ診断するための自分なりの基準・方法、を開発し、データベース化しておく。
4つのタイプの特徴を知った上で、その特徴が現れるタイミングや、意図的に出現させる問いかけ・その答え、などを自分の頭に入れておきます。本気でやるならば、Excelに落として管理するくらいをしても良い。
DiSCのマトリックスには、2軸ある。「感情開放度」と「断定的/協調的」です。
それぞれの軸に対して、Yes/Noの判断を下すだけなら、本来2つの質問で事足りるはずです。しかし、取り組んでみればわかると思いますが、判断の材料は無数ににあって、混乱するのが普通です。
また、コミュニケーション能力の高い人ほど、自由にポジションを出し入れするので、判断が難しくなります。
具体的な方法論については、企業秘密にしておくのがよいでしょう。
教えたとことで、テクニックに走るだけの浅い人間になってしまうので、採用プロセスに通るとは思えません。
苦労して自分なりのDBを構築してみてください。


1つヒントとしては、当面、グループワークに限った話と考えて、

  • 初対面で、どれだけ自分のことを話すか?
  • 反対意見を述べると、どういう反応をするか?
  • 待っているときの姿勢、態度は?

こんな意識を持って望めば、OKなのでは。
ドラゴンボールの登場人物に例えると誰だろうか?なんて、アナロジーで考えるのも有効です。
データベースがある程度そろえば、友人・知人の誰の考え方・雰囲気・仕草に似ているか?で類推できるようになります。
そして、類推(仮説)が合っていれば、そのポジションのデータを更新。
間違っていても、判断材料のデータを更新すればよい。


1回のグループワークで、一石三鳥。


そして、観察眼を磨いたならば、
会場に付いた瞬間から、同じ机のメンバーを観察、キャラの仮説を立てる。
議論が始まった瞬間、各人の一言目でほぼ確信する。
足りないポジションに、すかさず動き、努力を惜しまずチームのバリューを最大化する。
(応用技として、事前に「自分はこうゆうヤツだ」という刷り込みをしておくのもあり)


ね、簡単でしょ?
会場に着いた瞬間から、脳みそをトップスピードで回転させて、ここまで考えておきましょう。

3.人の意見を尊重し、議論に組み込む(自分の考えに取り入れて発展させる)

3つ目。
「聞く技術」は、コンサルの生命線です。
社内のディスカッション、クライアントとのミーティング、クライアントのお客さんへのインタビュー、あらゆる場面で必要とされる能力です。
そして、「聞く技術」は、単に「聞く」だけの技術じゃない。自力で、結論に近づく昇華を行えなければいけません。
換言すると、“アウフヘーベン”。

アウフヘーベン([独]Aufheben)
日本語では「止揚」「揚棄」と訳される。
ヘーゲル弁証法における根本概念。
あるひとつの命題(テーゼ)と、それに反対・矛盾する反命題(アンチテーゼ)との二つの相反する命題を、互いに否定しつつも生かして統合し、より高次元の段階である総合命題(ジンテーゼ)を導くこと。

はてなキーワード

ディスカッションの目的は、2つ以上の意見を昇華し、1+1=2以上の価値を生み出すことにあります。
特にいろんなバックグラウンドを持った人間が集まる(俗に、多様性というが)コンサルティングファームにおいては、新卒であろうと社内ミーティングで意見を言わなければ、激しく怒られます。
「お前はノーバリューだ」と。
クライアントとのミーティング、ヒアリングでも同様です。
要するに、相手の意見を聞いて、消化して、さらにより良いアイディアに導くこと。
「1+1=2以上の価値を生み出そう」と努力する姿勢は、常に意識して持っていなければいけません。


さらに言えば、コンサルタントが正しい意見を主張するだけでは、クライアントの信頼を勝ち取ることは出来ません。
頭が良く、ロジックにバキバキに強いだけでは通りません。
逆に、人間性が良く、人に好かれるだけではダメ。
とことん相手を理解しようとする姿勢、たとえ相手にとってキツイ意見でも恐れずぶつける勇気が必要です。
コンサルは、クライアントを動かしてナンボの世界。ロジックと人間性が高い次元で融合して、「アウフヘーベン」が可能になるのだと思います。


この能力を見せずして、コンサルに受かると思うなかれ。
言いすぎだと思うなら、見せるとポイントになることは間違いない、と言っておきます。


学生時代に、この“アウフヘーベン”ができる人は本当に少ない。
なぜなら、「止揚」というのは、自分の考えを論理立てて相手に説明できる人同士が、お互いの考えを100%理解し合わなければ、成立しないからです。
自分の学生の頃を振り返ってみても、似た考え・同じ考えにこそ出会えど、そこでアウフヘーベンするような意見にも滅多に出会いませんでしたし、自分の意見を正しいと主張することに懸命になりがちで、「否定」から入りがちでした。
グループワークでは、人の意見を尊重し、「議論に組み込む姿勢」を忘れないように。意識するだけでも変わります。特に議論が白熱したときは要注意で、意識してみてください。


また、コーチングのスキルを学んでおくと、自分の中で「傾聴モード」ができるので、役に立つと思います。
(コーチングについては、本やセミナーで勉強してみてください)
コントローラー気質で、メタメタに論破したい性分の私の場合には、非常に役立ちました。


続く。
(次回は、「就活生がケース面接の場でやるべきこと」について)



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参考本

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影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

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プロフェッショナル原論 (ちくま新書)

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