組織の人事でどこまで優しくなるべきか?
photo by plume-rider
いや、自分の部署の人事異動と機能配置に、ガッツリ悩んだ1ヶ月でした。(まだ終わっていませんが)
組織のトランスフォーメーションや、人材異動を考えるときに、ぼくがいつも迷うポイントは3つです。
今回も相当に苦しめられたので、エントリーに起こしておきたいと思います。
- 人材育成(中期的な組織の成長)
- 調和(短期の組織パフォーマンス最大化)
- 事業優先(明確な戦力配分)
1.人材育成学派
本気で、その人の成長を願うならば、非情になることが必要です。本当にその人のため、を信じる自信があることが前提ですが。
人を成長させるためには、多少の軋轢や、ミドル層の負担を覚悟の上で、どんどん新しいことをやってもらう必要があります。場数が育てるからです。
とはいえ、送り出す側としては、いろいろ考えることがありまして、、、
- 積極的に苦手な分野にもチャレンジしてもらって、敢えて人としての幅や深みを増してもらう。
- あまり強くないMgrの下で働いてもらって、自分の無力さ、と、マネジメントスタイルの違いを実感してもらう。
- どんな環境下においても、最高のパフォーマンスを発揮し、必ず良い評価を受ける術を身に着けて欲しい。
重要なのは、ちょっとだけストレッチしてあげることだと思います。
あとは、期待値の伝え方で、いくらでもやる気を引き出すことができます。
人は、悩んだ量だけ成長する。は、真だと思います。
特に新卒の子たちは、現状に安住しないように、常にユサユサしてあげる必要があるので、多少のリスクなら取る価値があると考えています。
2.調和学派
調和を重視するのは、ハマれば、組織のパフォーマンスは2倍にも3倍にも跳ね上がることを知っているから。
逆に、ハマらなかったときの、パフォーマンス低下がクリティカルだ、というのも痛いほど理解している。
自分への求心力が失われることも含めて、リスクを考えます。
だから、人の相性や、当人と周囲のモチベーションを考慮すればするほど、あまりドラスティックなことはできないものです。
いくらやる気になっても、日常業務の中ですれ違いや違和感を覚えてしまうのは、地味にデモチにつながります。
侮れない。
外部環境と内部環境の変化をにらみつつ、無難に調和学派に立場をとるほうが、最終的にはローリスク・ミドルリターンくらいにはなるので、多くの場合においてこの立場をとるのが普通です。
あとは、自分としての意思や信念をどこまで信じ突き通すか、ですね。
3.事業優先学派
事業のために、を第一に思えば、強くしたいところに、強いヒトを送る。
弱い部署の立て直しに、エースを送り込む場合もあれば、ガンガン攻める部署に上位層を送る場合もある。
管理系の部門であれば、人材の多能工化と専門性UPを推進しながら、人をどんどん現場に送り出すべきだ。
組織のサイズを可能な限り目一杯ミニマイズしておいて、それでいて、成果と事業貢献度を高めて行く。
ここは、①と②の融合と、事業全体から見たときのリソース配分の考え方に影響される。
バランスが難しい。
求心力について
以上、1~3のポイントについて悩みながら、組織のパズルを解くことに、結構な時間を使っています。
「考える」というよりも「悩む」に近い感覚。
1つ1つのピースをはめながら、影響の範囲がどうなるかを仮想する。最終的に自信が持て切れずに、もう一度、イチから練り直す。この思考実験の繰り返しです。
で、この検討を繰り返すと、
- 結局、自分がどこまでこの会社や組織にコミットしているか?
と自問自答することが自然と多くなります。
これは意図せず立ち上る、自分に対する質問で、真面目に答えようとすると難しいものです。
なぜ、この疑問が生まれるのか?
人事や組織の変革インパクトについて悩むとき、突き詰めて考えれば考えるほど、「自分がどこまでその人たちをグリップできているか?」求心力の問題にぶち当たるからです。
本当に安心して、この人について行って大丈夫なんだ、とメンバーに信じてもらうことが必要です。
そして、求心力の根源は、「人のコミットメントの高さ」です。
本気で事業と組織の未来を信じて、引っ張っていこう・責任を取ろう、と思っているかどうか、
メンバーたちはよく見ています。
もう少し思考を進めましょう。
では、Web業界(ベンチャー界隈)に、本当にコミットメント高い人がどれくらいいるのか?
ぼくが新卒1年目の子だったら、はなはだ疑問に感じる点だと思います。
ITバブルも弾けて、それなりの考えを持ったうえで、最初のキャリアとしてWeb業界を選ぶプロパー社員も増えてきています。しかし、組織の中核メンバーは、まだまだたたき上げの人は少ないのが実際です。
得てして、当たり前のように中核社員が辞め、別の社員が登用される場面も多く出くわすでしょう。現場のマネージャーレベルであれば、それこそ毎月のように変動があります。
そんな組織のなかで、プロパーの子たちは、なにを思うか?
「誰も会社の将来にコミットしていない」「この先なにがあるかわからない」ことが組織に属する上での前提になっています。
求心力の問題は、ココで、構造的な限界にぶち当たるのです。
ぼくなりの解
「メンバー1人1人の成長にコミットする」ことにしています。
たとえ、本気で、会社や組織に長期にコミットしていたとしても、それを証明するのは不可能です。まして、自分が本気でそう考えていたとしても、本質的には、どうなるか?なんてわかりません。
それをみんなわかっているので、創業メンバー以外は、どれだけ実績があろうとも信用を得ることはできないのです。そういう構造にある。
だとしたら、コミットできるものは限られていて、1対Nのリーダーシップ力を最大限発揮しつつ、同時に1対1のマネジメント力でどうにかするしかない、という話です。
番外編:中長期の内部環境変化
実は、ぼくが一番頭を使って、悩んだのは、上記の1~3ではありません。
ここまで読んで、えー!と思う人もいたらすみません。
結論から書いてしまうと。
これから何が起きるのか?
そのとき、自分たちがどういうことを求められるのか?
を、3ヶ月先まで読み切ったうえで、そこから逆算して最善手を探し出しました。
会社全体のなかで、部署に対して求められる期待役割がどうなるか?
このヨミを、絶対に外してはいけないと思っています。
逆に、このヨミさえ外さなければ、1~3は誤差の範囲だと思っているし、
もっと言えば、このヨミが当たっている前提で、その準備・仕込みとして1~3を考えています。
1~3が下手くそだと、ヨミが当たっていても、上手くパフォーマンスを発揮できません。
組織の長の大事な仕事の1つです。
ヨミの巧拙で、出世のスピードが変わります。
事業部も企画系もバックオフィス系も、すべてこの原理原則が働きます。
ヨミを当てるコツはありません。僕の企業秘密。
自分の人生と同じで、ヨミだけで行けるかというと厳しくて。
オポチュニティベースで、巧くチャンスをつかんで組織を浮上させることもあります。
ま、そういう正解のない世界だと思ってもらえれば良いです。
- 作者: デイビッドウルリッチ,David Ulrich,梅津祐良
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 1997/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 18回
- この商品を含むブログを見る
- 作者: ラルフクリステンセン,Ralph Christensen,梅津祐良
- 出版社/メーカー: 生産性出版
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ (光文社新書)
- 作者: 八木洋介,金井壽宏
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/05/17
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: リチャード・L.ダフト,高木晴夫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2002/11/28
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (5件) を見る