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ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

バリューと仮説思考について(後編)

Consulting work / 仕事

yo4ma32012-04-09
さて、「バリューと仮説思考について」の後編を書いてみようと思います。
はじめに前編の復習しておきましょうか。前編では、

  • バリューっていろんな種類があって、誰にとってのバリューなのか?を考えるところからはじめよう
  • その際は、「クライアント・インタレスト・ファースト」や「チームとしてのバリュー最大化」という考え方が重要
  • また、バリューを理解することは、仮説思考を理解するために大切
  • 「仮説」とは、「論点に対して、なんらかのロジックをつけた答えの予想」
  • 「仮説思考」には、「ロジックが必要」で、ロジカルシンキングと密接に関係している
  • 「仮説」を考えるためには、「論点」を特定することが重要
  • 仮説を考え始める前に、何を解くべきなのか、に頭を使うことは、一流のコンサルタントにとって必須のプロセス

ということを書きました。

面白い仮説を考えること

さて、面白い仮説って何なんでしょう?


結論から言ってしまうと、
戦略仮説の構築については、「分析的な思考アプローチ」のさらにその上の次元での「ユニークなアプローチ」がある、ということを知っているかどうか。
んでもって、両方を高いレベルで融合し、圧倒的なバリューを出し続けた実績があること
コレがコンサルタントの超一流と普通の違いです。

誰にとって面白いのか?

前編でバリューについて考えたように、面白い仮説についても、「誰にとって」面白いのか?という観点から、まずは考えを掘り下げてみましょう。


参考になりそうな話として、以前、岡田斗司夫氏のブログ(この記事)を読んでから、「クリエイティブ」の意味についてモヤモヤ考えていたことがあります。
(Twitterでもその断片を書き残しました。この記事は、凄い熱量の文章です。本当に面白いことを考えられる人はロジックでギリギリまで詰めて、最後に飛躍して広がる、その思考を垣間見える良い例です。)


諸説あるのでしょうが、僕が思うに、
「クリエイティブ」というのは、「独創」とか「新しい」って意味ではない、ということ。
独りよがりな世界に入ってしまってもそれはアーティストの狂気です。新しいということも、誰にとってなのか見えてきません。
「クリエイティブ」の意味を考えたときに一番しっくりくるのは、
「面白い」とか「楽しい」って感情を伴うものだ、ということでしょうか。


「面白い」「楽しい」と思うのは、クリエーター本人はもちろん、なによりも「受け手」がそう思わなければ意味がありません。
発信者だけの世界では、クリエイティブなんてことは起こりえないからです。
メッセージに対する受け手の化学変化があって初めて”クリエイティブ”という言葉が当てはまります。


メーカーのブランド戦略やマーケティングにどっぷり漬かりながら日々感じるのは、みんなが「面白い」と思えることを考えること、の大切さです。そして、それを「プレゼント」できるだけの演出も同じくらい大事。
プレゼントの受け手は、社内の意思決定者であり、仲間・同僚であり、取引先であり、
なにより、お客さまなのです。

地道に想像して理解すること

よく勘違いされるのは、「面白い」ものだと見せようと、アイディア"モドキ"をドヤ顔で語ったり、小手先のプレゼンテクニックに走ってしまうこと。その先には、周りを否定して、自分を評価してくれる居心地の良い環境へとドンドン追いやられてゆく道しかありません。
(これは、某所で繰り広げられたikedahayato氏の議論を見ていて改めて思ったものです。)


ぐっと踏みとどまって、耳を傾け、内省し、昇華するプロセスを無限ループのように繰り返して、初めて「面白いことって、なんなのか」と、本質的な解にたどり着くことができます。
「創造的な活動には孤独が必要だ」というのは正しいのですが、それは、周りの意見に耳をふさいで、独りよがりな世界でぬくぬくと我侭な態度で過ごすこととは、天と地ほど違います。自分に都合よく解釈して、独善に走らないこと。
常に、周囲を観察し、フィードバックを受け入れること。
自分の感度をめいっぱい開いて、目の前にいる人、関係者、さらにその先でメッセージを受け取る人などに思いを馳せ、彼らの反応を想像し切ること。腹の底から理解すること。
意識的にせよ、無意識的にせよ、受け手の感情を想像して理解するプロセスを経なければ、いつまでもクリエイティブな人にはなれません。
ここは本当に苦しいプロセスです。
そして、仮にあなたがこのプロセスなしに、根っから面白いことを考えられる人なら、芸人になればいい。


ビジネスの文脈ではこうなります。
世の中の潮流、社会の構造変化を地道に解きほぐし、未来を想像した上で、グローバル目線でビジネスモデルのあり方そのものを見直す勇気と、構想力。
企業に脈々と受け継がれる文化、働くヒト、持つケイパビリティ、経営者の胆力を見極めて、本当に指し示すべき将来の戦略を描ききること。
マーケティングが肝となる事業では、お客さまの価値観や生活スタイルの変化を敏感に嗅ぎ取りながら、本当の洞察(インサイト)を得ること。
バリューチェーン上のポジショニングが肝となる事業では、20-30年先の競合プレーヤーの動き・最終製品の需給バランス・地軸の変化を想像し、エンドゲームを想定すること。
シュアなシナリオと悲観シナリオに対して、動くべきタイミング・兆しを見極め、打つべき手を大胆に実行すること。
事業開発の現場では、ベンチャー()にはない熱く、クリエイティブな知的格闘があるのです。(でも、ベンチャー大好き!万歳!)


こうした文脈を理解した上での「クリエイティブ」であり「面白い戦略仮説」なのです。

孤独になることの意味

ちょうど「創造性を上げるには「孤独」になれ」(この記事)という記事が人気でした。
先ほど、孤独を勘違いしてはいけない、と言いましたが、「孤独であること」と、「面白いことを考えること」ってのは両立できるものだと思います。


ぐっと構想を練ったり、面白い仮説を考えるときには、やはり孤独な世界を自分で意識的に作ります。
そして、孤独な世界の中では、クライアントの置かれた文脈や戦略の前提に思いを馳せつつ「なにが面白いのか」を考えています。環境は孤独でも、頭の中には広い意味での受け手(お客さま含む)でにぎわっている、こういう状態を作って初めて面白いことが発想できます。


あとは、孤独な世界を一通り過ごした者同士でのブレストで、一気にブレークスルーが起こることも多くあります。これをきちんと分解して考えてみると、「孤独」と「受け手」が交互に立ち上ることで、ある種、両立できている例なんだと思います。


「創造性を高めるために、孤独であること」と同時に、「お客さまを含む受け手の将来を想像し切って、本当に面白いことを考えること」を愚直に行うことが必要なのです。


また、部屋に篭って、好きなことを妄想するのも大切でしょう。芸術家のように、時間がたっぷりある場合には。たくさん妄想すればいい。楽しいからね。
でも、僕らには限られた時間しかない。その中で、必ず納得ゆくアウトプットを出さなければいけない。たとえば、1時間と区切って、がーっとプロジェクトの検討アプローチを設計したり、初期仮説を練り上げるのです。
だらだら8時間考えていても、考えは進みません。
「妄想する」ことと、「考える」こと、は明確に使い分ける必要があるのです。

まとめ

さて、いつもどおり小難しいことを散々書いてきました。まとめましょう。


「クリエイティブ」な考えや発想は、「面白い」とか「楽しい」って感情を伴うものです。
そして、「面白い」とか「楽しい」と思う相手は、社内の意思決定者であり、仲間・同僚であり、取引先であり、なにより、お客さまです。
彼らに対して、きっちりプレゼンをプレゼントすることが大切です。


「クリエイティブな発想」や「面白い仮説を考える」には、創造力(想像力)の使い方ひとつです。
それは、巷で安易にイメージされる創造(想像)とは一線を画すもので、地道に受け手の反応を創造しきって、耳を傾け、内省し、昇華するプロセスを無限ループのように繰り返して、初めてたどり着くレベルのことを指します。


また、創造性を高めるためには、「孤独であること」と、「面白いことを考えること」を両立することが必要です。
「創造性を高めるために、孤独であること」と同時に、「お客さまを含む受け手の将来を想像し切って、本当に面白いことを考えること」を愚直に行うことが必要なのです。
そして限られた時間内で納得いくアウトプットを出すためには、「妄想する」ことと、「考える」こと、を明確に使い分けましょう。


以上の考察をすべて踏まえて、
戦略仮説の構築については、「分析的な思考アプローチ」のさらにその上の次元での「ユニークなアプローチ」がある、ということを言っています。
両方を高いレベルで融合し、圧倒的なバリューを出し続けることができる人材が、クリエイティブ人材なのです。


さて、長くなりましたが、バリューと仮説思考について(前編)(後編)に分けて書いてみました。
わかりにくい文章は承知の上です。僕自身、いま理解している目一杯のところで言語化しています。わかり易く書くためには、もっと深く理解し、経験を重ねることが必要なんだと思います。


中長期に愛され続けるブランドになるために。
地軸の変化に応じたグローバル目線で、時代や世代の空気感を読めるクリエイティブな思考が求められています。
1人でも多くのビジネスパーソンが、思考力に磨きをかけて、世界で戦ってゆける日を願っています。

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