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ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

バリューと仮説思考について(前編)

yo4ma32012-04-04
先日は、バリューベースで働くことについてエントリーにしました。
エントリーでは、自分なりに「バリューとは何か」について、悩み、答えを見出すことが重要だ、と言いました。
バリューにもいろいろあるんですね。


たとえば、プロジェクトの限られた期間・限られたインプットで「面白い仮説を考えること」は、クライアントにとって最大のバリューとなります。最終的に、すべてのバリューはクライアントに結びつかなければいけない
この考え方が、プロフェッショナルの黄金律「クライアント・インタレスト・ファースト」です。


一方で、仮説を考えること以前に、「インタビューメモを書くこと」だって、チームの検討を進めるための立派なバリューの1つだと、とらえることもできます。(インタビューメモについての記事はこちら) 
クライアントはもちろんのこと、ファームであり、チームであり、身近な上司にとってのバリューというものも存在するということです。
この考え方に則ると、よく華やかなイメージで語られる「仮説を考えられること」や「アウトプットとしての面白い仮説」、それ自体がお客さんにとってのバリューになるとも言えるのですが、加えて、最終的にチームとしてのバリューを最大化するために、「インターナルの議論やブレストの場で、面白い仮説を出せること」というのも、同じくらい重要であることがわかってもらえるかと思います。


もっと小さい話をすると、ジュニアな頃は、マネージャーやシニアメンバーが検討に専念できるように、「ロジ周りを完璧にこなしておくこと」も、(つまらない雑用と思いつつも)チームにとってのバリューとしては大きいと思います。
さらっと書いてしまいましたが、「チームとしてのバリューを最大化する」、という観点は、本に書いていないけれど、持っておくべき重要な視点だと思います。


これらの例から言えることは、「クライアント・インタレスト・ファースト」にせよ、「チームとしてのバリュー最大化」にせよ、
「誰にとってのバリューなのか?」を考えることが、「バリューって何か?」を考える1つの鍵になるということです。


もう少し言っておくと、「バリューを出すことができる」とき、というのは、

  • クライアントの経営課題に対する理解の深さ
  • 切れ味の良い、仮説思考
  • 定量的な分析思考
  • 高いコミュニケーション能力
  • キメ細やかな気配り
  • 憎めない、愛されキャラ

・・・
など、といろいろな要素が複雑に働き合っています。(特に、ヒューマンスキルは個人的に重要だと思ってますが)


今回は、中でも「仮説思考」について、もう少し具体的に書いてみようと思います。
巷にあふれるハウ・ツー本レベルの話ではなく、本来、こういったバリューベースで働くことの意味から理解してゆかないと、意味がないと思っていますので。

仮説ってなにか

実際のところ、バリューって何かがわからなくとも、プロジェクトにおいて、面白いアプローチや、面白い示唆、面白い発言、を求められる場面に入社早々から出くわすでしょう。
「あなたは、どう思う?」と。
ここで求められているのが、「仮説」です。


イシューを理解して、ロジカルに自分の考えを説明できることが第一歩ですが、そこで止まっているレベルはすぐに過ぎるでしょう。
コンサルタント同士の議論の醍醐味は、前提知識や情報が少ない中で
「いかに筋の良い発言をして、互いの頭を創発し、議論に貢献するか」、
ってとこにあります。この議論に貢献するような筋の良い発言をするために、「仮説思考」が必要となります。


よく誤解されるのですが、「仮説思考」=「戦略を仮説的に考えること」、だけではないということです。


ここは丁寧に説明しましょうか。
当然ながら、戦略仮説を構築し、検証することが、プロジェクトの最大ミッションです。ただし、仮説にもいろいろな種類があって、

  • 「戦略の仮説」
  • 「論点の仮説」
  • 「現状理解の仮説」
  • 「お客さんの言っていたことを解釈した仮説」

など、多岐に渡ります。
これら1つ1つの事柄に対して、120%正しいと判断するだけの情報をすべて得ていては、日が暮れてしまいます。
限られた情報の中で、仮説的に判断しながら、思考を積み重ねることで、戦略が練り上げられてゆくということです。
そして、その思考の積み重ねを加速するために、議論をします。


通常の検討プロセスでは、まず、プロジェクト全体の問いに答えを出すための大論点を設定します。
大論点を中論点、小論点へと分解してゆき、その中でも主要な論点に答えを出すことで、遡って、各問いに答えをだしてゆきます。
その結果として、最終的な戦略が出来上がります。


大論点 − 中論点 − 小論点


と論点をブレークダウンした後に、それぞれに対して、仮説的な答えを想定しておきます。
これが「論点リスト」に対する仮説です。(論点と仮説の話は、この本が秀逸です。)


したがって、「仮説」というのは、「論点に対して、なんらかのロジックをつけた答えの予想」と説明することができます。
入社4ヶ月してやっと気づいたことは、4年前にも記事にしています。


そして、この”答えの予想”を支える「“なんらかのロジック”を考えること」も「仮説思考」の一部なわけです。


最初に、

「あなたは、どう思う?」と。
ここで求められているのが、「仮説」です。

と書きましたが、「あなたは、どう思う?」という質問を丁寧に解釈すると、

「あなたは、どう思う?」
=(解釈)何でも良いので、あなたなりのきちんとした「ロジック」を組み立てて、仮説を言ってみて

ということです。当然、ロジックが間違っていたら、詰められますので。


まとめましょう。
「仮説」とは、「論点に対して、なんらかのロジックをつけた答えの予想」です。


「仮説思考」には、「ロジックが必要」です。
「仮説」っていうのは、単なる当て勘や第六感といった説明できないものではなく、後からでも良いので「理屈を付けて」ストーリーとして語れるものなのです。だから、「仮説思考」と「ロジカルシンキング」は切っても切れない関係にあるわけです。この関係を説明した書籍は少ないのですが、どちらか一方だけを追求しても、何もできるようになれませんので、注意しましょう。
もっと言うと、「仮説を生み出す」ときには、「ギリギリまでロジックを積み上げて」考えてゆきます。コンサルティングファームで、シニアなマネージャーやパートナークラスになると、その積み上げをハイレベルで、かつ、超高速に行うことができるだけで、そこは変わりません。「仮説というのは、どこからともなく神のお告げのように立ち現れるもの」と誤ったイメージを持って勘違いしている人も多いですが、ふっと思いつくのは、ギリギリまでロジックで考えた最後のジャンプのことだけを指しています。そこは、アイディアの発想に近いものがあるのかもしれません。


また、「仮説」を考えるためには、「論点」が重要です。
初期的には、経営者の頭の中にある論点は何なのか。
さらに、クライアント企業にとって、本当に解くべき問い(論点)が何なのか。
コンサルタントにとって、論点を外すことは致命的です。ただし、当のクライアント自身にとっても、本当の論点が何なのかは、曖昧なことも多分にあります。一緒に議論をしながら、論点を特定してゆくプロセスを経るだけでも、仮説に対する納得度が断然良くなるものです。
真の課題として、論点をきちんと設定すること。仮説を考え始める前に、何を解くべきなのか、に頭を使うことは、一流のコンサルタントにとって必須のプロセスです。

面白い仮説を考えること

さて、面白い仮説って何なんでしょう?



後編に続きます。




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