ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

戦略の変数/企業の成長ドライバー

yo4ma32012-03-13
コンサルタントがDay1で仮説を作るときには、「戦略の変数」や「成長ドライバー」といった概念を意識しています。
特に、なじみのない業界だと、この変数の見極めが、最初の鍵となります。初日に業界の入門書レベルから、レポート・記事類をざっとインプットする中で、おおよその論点仮説と、戦略の方向性オプションを特定してゆきます。


情報のインプットは、目的のないまま行っても、それは単なるお勉強です。
それでは、どうやって、この仮説を練る部分のサイクルを高速で回すのか。
プロジェクトのテーマや、クライアントのイシューへの理解が前提にあって、その上で業界の抱える課題構造や、企業が取るべき戦略の方向性を理解するための論点をクリアに持つことが肝だと思っています。
繰り返しますが、「戦略を策定するための論点」ではなく、「課題構造の理解や、戦略検討に必要な前提を理解するための論点」です。2つは包含関係にありますが、この違いを理解しないまま解に走ると痛い目にあいます。
何よりもまず、自分が何を理解したら戦略を検討できるのか、という考え方の考え方について、頭を悩ませることが重要ということです。
慣れないジュニアの頃は、よくわからないまま、とにかく詳しくなろうと資料を読み込みながら、PJテーマに対して色々な思いを馳せる時間となってしまいます。これはこれで大事なので、一歩一歩できるようになれば良いと思うのですが、ジュニアと一人前のコンサルタントの違いは、事前にこの論点を構造化して、頭の中で整理し続けられるかどうか、なんでしょう。
慣れてこれば、PJが始まる前の土日などに、ざっと一般的な業界知識のインプットをしたときに、だいたい当たり付けすることができます。


この成長ドライバーを把握できれば、PJの3分の1は解けた気になります。
あとは、論点を分解し、Factを押さえて、より精緻なものにupdateしてゆくだけで、軽く1〜2週要します。


ただ、勘違いしてはいけないのは、この仮説はあくまで「ごく一般論」でしかない、ということです。
業界内で長年悩み抜いてきた人なら誰もが行き着けるレベルのもので、クライアントの経営陣に納得してもらえるレベルではありません。
Fact集めのリサーチの間に、クライアント独自の強み、競合メーカーの勝ちパターン、業界特有の慣習や考え方について、エキスパートインタビューや、クライアントとの議論を通じて、仮説にオリジナリティを持たせるようブラッシュアップしてゆきます。
通常はこの検討を通じて、「論点の仮説」がブラッシュアップされ、より深堀りすべき検討項目を特定します。「戦略の仮説」はもちろん検討しますが、「戦略の仮説」だけに頭を使っていては、一向に解は見つかりません。
「問題が何かわかれば、半分解けたも同然」
といわれるように、解くべき問い(=論点)について、頭を悩ませることが重要です。
そして、ここが戦略コンサルタントの腕の見せ所です。テーマの広さによりますが、さらに、4〜6週を使うことが一般的でしょう。


表面的には、圧倒的な整理力とコミュニケーション能力でもって、クライアントの信頼を勝ち取りつつ、納得感のある戦略に仕上げてゆきます。
裏側では、「面白い仮説」ってないんだろうか、と色々なインプット&議論&アウトプットを通じて、仮説のブラッシュアップに時間を使います。


一通り、オーソドックスな戦略PJをやりながら感じていたことをまとめてみましたが、頭で理解するのは簡単かもしれません。
実際に、これらを一通りまわすことが、マネージャーの仕事です。
これらを物凄いスピード感で以って、マルチタスクで安心して任せられること。さらに、クライアントの絶大な信頼を勝ち取って、次のリードにも繋げられる。専門性をドンドン高め、クライアント企業の深いテーマも任せてもらえる。だからこそ、企業価値を目に見える形で上げられる。そんなプロマネが理想ですね。

業界ごとの違い

「戦略の変数」「成長ドライバー」について、もう少し説明しておきましょうか。


「戦略の変数」は、業界によって大きく異なります。
そして、「成長ドライバー」は、企業の現在のポジションによって異なることが多いです。


たとえば、エネルギー、金属、化学品、資源、通信といった兆単位の投資を必要とする装置産業では、戦略の変数は少なく、成長ドライバーも企業によってそんなに大きな違いはありません。ある種、ワールドワイドで成功モデルが確立しており、それ以外の中途半端なポジションの企業が生き残りをかけて四苦八苦する構図が出来上がってしまっています。
また、小売、サービスに至っては、基本的に国内中心であることに変わりはなく、投資はごくごく小規模です。変数としては、立地、品揃え、顧客体験といった限られた要素しか動かせません。チェーンならオペレーションも加わる程度でしょう。近年は、グループ親会社やファンドの資本が入ったことで、成長ドライバーを海外に見出す企業が多いのが特徴だと思います。それでも、投資額は、装置産業と比較しても小規模です。


一方で、消費財と括りますが、化粧品、飲料・酒、食品などでは、製造〜営業/小売まで垂直統合しているモデルが一般的で、マーケティングの要素が入ってきます。他業界と比較すると、全社・事業戦略レベルで検討しなければならない変数が一気に大きくなります。
ブランドが属するカテゴリーや、ポートフォリオにもよりますが、基本的に内需が非常に大きいので、国内での競争の中で、新しい市場自体を開発し、パイの拡大を図ると同時に、海外を試行してゆかねばなりません。市場ポジションによっては、国内をそこそこにして、海外に軸足を移す企業も多くある一方、ひたすら国内でマーケティング・イノベーションを起こしまくり、成長を続ける企業もあります。


強引にまとめるとこんな感じでしょうか。


業界研究や、企業の戦略分析をする際には、こんな目線で以って見てみると、違った絵姿が見えてくるのではないでしょうか。
小難しい話になりましたが、今日はこの辺で。



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