ignorant of the world -散在思考-

元外資系戦略コンサルタント / worked for a Global Management Consulting Firm in Tokyo

“UPorOUT”は本当か?

yo4ma32009-09-07
突然の話になりますが、2年目にして、同期数名が会社を辞めるようです。
「辞めるようです」というのは、まだ本人からの連絡もなく、会社からの正式な公表もないからで、少し水臭いな〜と思っているところです。
これまでも、中途で入社された方が、早々と会社を辞めなければいけない状況になってしまったのを何度も見てきましたが、
今回いよいよ同期かと、動揺を隠せない人もいます。僕個人はというと、いろいろ思うところはありますが、


「残っても本人のためにはならない」


この一言に尽きるのではないかと思っています。
辞める理由もよくわかりません。
自分の興味を追求すべく、ポジティブに辞めるのか。はたまた、俗に言う“UPorOUT”なのか。
いづれにせよ、「このファームに残る」という選択肢よりも、本人にとっては良いことのように思えます。


特に、後者の話については、敏感に反応する方や、気になる方も多いかと思います。
皆さん(特に学生さん)にもう少し「外資コンサル」を理解していただくために、僕が1年半の間に“UPorOUT”の実際のところを見聞きした範囲内ですが、実際のところをお伝えしたいと思います。
(どこかのファームの説明会で、同じ話をしていたら、僕だと思ってください。)


論点

9月になり、既に、各ファーム、サマーインターンやオータムジョブの開催、ウィンタージョブに向けた説明会の開催を始めています。
自分が学生として採用プロセスに参加した3年前から、毎年、説明会の手伝いや、プロセスの設計に携わってきた中で、
よくある“UPorOUT”に関する質問をまとめると、大きく3つくらいになるかと思います。

  • 対象者

新卒と中途で、評価の厳しさに違いはあるか?違うとしたら、どう違うのか?

  • 評価の方法

一度、×が付くとそれで終わりなのか?

  • 実際辞める場合の猶予

「朝会社に来たら、自分のPCがない」という突発的な状況がありえるのか?


現時点でお答えできること

  • 対象者

新卒と中途で、評価の厳しさに違いはあるか?違うとしたら、どう違うのか?


⇒ “求められるもの”が違うので、当然、評価の厳しさは違う。
ご想像のとおり、通常、新卒は育てて一人前にする、第二新卒は新卒とほぼ同じ(プラス業界知識があればベター)、中途は即戦力として期待されていますので、時間的猶予は、新卒の方が長いです。中途はシビアです。
また、求められる資質としては、いづれもプロフェッショナルとして恥ずかしくない、知性とスキル、人間的魅力を備えた上で、
新卒はバキバキのロジック勝負、切れ味勝負の世界でのバリュー、中途はどちらかと言うとヒューマンスキルや業界経験といった、新卒にはバリューの出せない領域でのバリューを求められることになります。求められる、というのは言いすぎかもしれません。
そうやってバリューを出している人が、結果を出して、ファームに残っていく傾向がある、ということの裏返しで捉えています。


自分が何を求められているのか、マネージャーやさらに上の人と
随時、確認を取りながら仕事し、それにきちんと応えることができれば、心配ないでしょう。




  • 評価の方法

一度、×が付くとそれで終わりなのか?


⇒ 通常、2度まで。といっても、よっぽど酷い×の話です。
前述とおり、中途の方の時間的猶予は、結構シビアです。かといって、一回の×で即解雇ってこともありません。
必ず一度、パフォーマンスに対するFBと今後の動き方の相談があるはずで、それで修正できない場合には、
向いていないと判断されても仕方がないかもしれません。
ただ、1つのPJ内では、テーマやメンバー構成、お客さんの性質も固定され、軌道修正が難しい場合もあるので、
2つ目のPJで判断、というパターンが多いように思います。
じゃあ、新卒なら安心かというと、そうとばかりは言っていられず、
「●年以内に▲の評価を受けられない場合/1つタイトルを上がれない場合は、グローバルで認められずに、退職しなければならない」
といった“隠しルール”があったりします。


と、少し脅してみましたが、意外と人間的な部分もあるので、安心してください。
人間が資本の会社ですから、「人材育成」に関しては、日本の事業会社に比べても、丁寧にケアしてくれるファームもあります。
多少形は違えど、各ファーム、メンター・メンティー制度があり、常に相談でき、味方になってくれる人がいます。PJのマネージャーも、ジュニアメンバーの育成をミッションとして与えられ、自分のPJで成長できなかった場合には、それなりの責任と評価を問われる(はず)(まぁ、この辺りはグレーですがね。)
通常、ギリギリの評価の人には、本人にもその評価が伝えられ、次のPJの開始前に「●●と▲▲と××を見るので、こういうところを見せてね」とマネージャーと打ち合わせをします。新卒も、伸び悩んでいる人がいれば、メンターやマネージャーがケアし、PJの途中でも、具体的に「ここをこう変えて動いてみて」とアドバイスを受けられる。
そんなイメージです。



  • 実際辞める場合の猶予

「朝会社に来たら、自分のPCがない」という突発的な状況がありえるのか?


⇒ それは、投資銀行やファンドならあり得るかもしれないが、コンサルティングファームでは、聞いたことがない。
そもそも、PCはノート型で、常に持ち歩いているし(笑)


というのは冗談で、2つ目のPJや、いろいろな人のアドバイスを一生懸命実践して、ダメだった場合には、事前通知と辞める際の段取りを打ち合わせます。だいたい、本人もわかってますし、評価の日は予め、偉い人とのmtgがセットされますので、翌朝、ってのは無理があります。
その後、有給消化も兼ねて1ヶ月くらい休みをあげるから転職活動をしてね、ってパターンが多い。


この業界、どこで仕事に繋がるかわかりません。
辞めた人が他業界で活躍されて、仕事に繋がる、なんてこともありますし、逆に、変な噂や評判を立てられて、失注する、なんてこともある。
客商売の嵯峨ですが、辞める人に対してもケアしてし過ぎることはないのです。




で、要するになんなのよ?

僕の限られた了見の中ですが、「“UPorOUT”は存在するか?」という問いに対する答えとしては、


即ファイヤーの“UPorOUT”は存在しないが、
そこは高いフィーを頂くプロフェッショナルの世界なので、それなりに厳しく評価されるよ!


ということ。当たり前っちゃ、当たり前ですね。別にコンサルが特別だと言うつもりは毛頭ありません。
それでも、僕がこれまで見てきた、入社後すぐに辞めてしまった中途の方や、同期のように辞めていく人が
一定数、存在するのは事実です。



では、なぜ、早期に退職する人が存在するのか?

答えは、

  • 求められる基準がハンパなく厳しいこと

「総合格闘技」。
コンサルタントという職業を表すには、この言葉が一番しっくりくるのではないか、と思う。
それまで日系企業のエリート街道まっしぐらで来た20代後半〜30代前半、MBAホルダーの人が、すっげー苦労しているのを見るに、
MBAなんぼのものじゃい!って感覚は、やっぱりある。
どんなやり方でもいいから、バリュー出してこそのコンサルだ。
(クライアント企業にも、コンサルティング・ファームにいたっておかしくない程、賢い人は五万といます。そんな人を見て、僕なんてまだまだだ、と心を改める日々です。)


求められる基準とは、
頭の良い/悪いではなく、自力で「考える」道筋がある程度リーズナブルにできて、
自分の課題設定を適切に行うことができ、貪欲に成長機会を捕まえていくことができること。
クライアントと日常的に一対一で張り合って、負けて帰ってこないこと。
クライアントの信頼を勝ち取るだけの、ひたむきな姿勢や、
本当にその会社をよくするためにはどうしたら良いか、クライアント企業の社員よりも真剣に、一生懸命、全力で考え続ける姿勢、
を、自ら楽しんで実践できること。
などなど・・・


常に“考え抜く”ことを求められる環境で、「プライドが高く、口が達者な」表面的には賢そうな人は瞬殺されてしまう。
どこかに、致命的な齟齬が生じると、続けられなくなる場合が多い。


  • 採用側のスキルにばらつきがあること

一方で、採用側の問題も多分にある。
求める基準が高い一方で、面接を担当する専門的な人材を抱えるファームは少ない。
コンサルティングのハードワークの中で、土日を使って面接官をする、という運用の場合には、どうしても面接官のスキルにばらつきが生じる。
この辺がうまいファームは、全面接に同席する「ゲートキーパー」が何人かいたりするし、
各ファームも、重ねて違う人で面接をして、極力採用ミスが生じないよう努めている。


  • その結果として、採用ミスが起きている

しかしながら、結果として、キャンディデイトの表面的な部分に目を奪われ、判断を誤ることもしばしばある。
単純に能力が足りない人を採ってしまう、というより、
「極限の状況に置かれた時に、逃げてしまう人」
「仕事に対する根本的な価値観が合わない人」
「常駐先で日々客前には置いておけない人(面接というあらたまった場では良くとも)」
「一緒に働きたくないような、人間性の人」
・・・
他のファームの人とも話してみたが、上記のような例は、枚挙に暇がない。
正直わかりにくい部分も多いが、面接をしっかり検証してみると、
面接官側は「ケースをやった」気でいるが、実際、ぜんぜんケースと呼べるような激しい知のラリーはない、とか、
誰も志望動機を突っ込んで聞いていない、といった例もあった。


必ずしも、本人が悪い、訳ではないのである。



もし、自分がクビになってしまったら、

自分の能力が足りない、とか、人格を否定された、ように受け取ってしまい、落ち込む人も多い。
が、前述の通り、「あなたの責任ではない」要素も多分にある。


気休め程度かもしれないが、「縁がなかった」程度に捉えて、他業界で活躍して頂きたいと、切に願う。
現に、弊社でも、早期に辞められた方で、他業界に行き、水を得たように活躍されている方も多数いらっしゃる。
特に、辞めていく同期は、一生、「同期」なのである。
今後も活躍してもらって、お互い刺激を与えられたらハッピーだと思っています。


長くなりましたが、世間でイメージされる“UPorOut”の現状は、
外資コンサルには、当てはまらないどころか、人材育成に関しては人一倍、丁寧であること。
コンサルの採用は、まだまだ改善の余地があること。
それに対して、僕も、採用された当時の頃から問題意識を抱え、改革に取り組んでいます。


数年後、採用市場をあっといわせるまでお楽しみに。



余談ですが、

説明会で、この“UPorOUT”を意識した質問をされる学生さんは多い。
心配な気持ちもわかりますが、個人的には、説明会の質疑応答や社員と1対1の場で、この類の質問は発言に注意した方が良いと思います。
このような質問をするのは、ある程度、採用プロセスが進んで自分を評価してもらってから、慎重に、「相手」と「枕詞」を選んで発してください。
それでも遅くはないので。


初期段階で聞くべきことは、もっと他にあるはずです。初対面や2回目くらいの場で、いきなり辞めることを想定した質問は、「自信がないことの表れ」以外には理解されないでしょう。最初は、「自分の能力を認めてもらって、入社後バキバキに成長してやる!!」くらいの気合が欲しいものです。
まぁ、個人的な感覚ですが、同じように考える人もいますからね。


こういった話も、
「よく考えられた質問」と「よく考えていないなと思われる質問」
といったタイトルで、いつかエントリーにしたいと思います。


ではでは、説明会でお会いできることを楽しみにしています。


参考:コンサルティング会社の『アップオアアウト』というカルチャー

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